佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
5人が円になり、その中にいるキャプテンからの最終確認を聞いていく。
それに4人は返事をしていき、キャプテンが最後に静かに頷いた。



それを確認し、5人でパイプ椅子に座っている林先生の方を見る。



キャプテンが話している間何も喋らず、ただ静かに座っていた林先生。



そろそろ還暦になるのにダンディな林先生は、5人の視線を受けてゆっくりと立ち上がった。 



つい数年前までうちの高校の男バスの顧問で、副顧問だった土屋先生に男バスを引き継いだ林先生は、この高校の女バスの顧問になった。



星野君が花音ちゃんの首に金メダルを掛けた瞬間にも立ち会っていた林先生が5人のことを見詰めニヤッと笑いながら口を開く。



そして、今日もいつもの試合前と同じ台詞を言う。



「今日も楽しんでこい、女子高生。」



「「「「「はい!!!!」」」」」



5人の返事が重なる。



それから・・・



4人のスタメンの先輩達が私のことを見た。



私のことを、見下ろした。



それからゆっくりと・・・



ゆっくりと、キャプテンが私の頭に手をのせる。



そうすると他の4人の先輩達も次々と私の頭の上に手をのせていくこの光景を、私はうちの女バスのユニフォーム、今日のベンチ入り最後の背番号である15番のユニフォームを着ながら眺める。



私は佐藤先輩がこの高校にいるからこの高校を選んだのではない。



私は、バスケットボールをする為にこの高校を選んだ。



魔法使い星野君を優勝へと導いた林先生の元でバスケットボールをする為に、私は今此処にいる。



もう左膝は治った。



もうどこにも怪我はない。



楓から入念なストレッチもして貰った。



心まで完璧にほぐして貰った。



「行くよ、1年。」



キャプテンが今日もこの言葉を言う。



「もう2年生です。」



「うちらにとって晶はずっと1年だよ。
小さな小さな1年生、なのにとんでもない化け物みたいなヤバい奴。
初めてプレーを見た時の衝撃を、私達はきっと一生忘れられない。
初めてパスを渡された時の衝撃は絶対に死んでも忘れられない。
歳上の私達が死にそうになっていたとしても、私達は晶がいれば何度でも生き返ることが出来る。」



「・・・・・・はい。」



「泣くのは優勝した時まで取っておくよ。」



「はい・・・!!」



「晶の兄貴が晶から金メダルを掛けて貰うのを楽しみにしすぎて、"忍びの里”からせっせとこっちにまで下りてきてさ、煩くアドバイスしてきてマジでウザいから、とっとと金メダル取りに行くよ。」



それには皆で笑うと、キャプテンが大きな大きな声で叫ぶ。



「今日も大暴れするよ!!!!」



「「「「はい!!!!!」」」」



中学で佐藤先輩と出会ったら、私はバスケットボールと出会った。



高校の男バスで佐藤先輩と出会ったら、私はもう1度バスケットボールと出会うことが出来た。



私達の熱い夏が今年も始まっていく。



そして、私の青い春は、きっとまだまだ続いていく・・・。


























「キャァァァァ――――――――ッッ!!!!
晶せんぱ〜〜〜〜〜い!!!!」



「晶ーーーーーーーーっっっ!!!!
頑張れーーーーーーっっっ!!!!」



可愛い女の子達からキャーキャー騒いで貰いながら、私の青い春も続いていくのだと思う。
















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