その手で触れて、そして覚えて。
「悲しい事思い出させちゃったね。ごめんね。」
「いえ、七花主任だから、話せたというか、、、」
「じゃあ、わたしの話も聞いてくれる?」
わたしがそう言うと、街風くんはハッとした表情をして、わたしを見た。
「私がバツイチなのは、、、きっと知ってるよね?周りの子たちから聞いてるでしょ?」
「え、あ、まぁ、、、さっき、飲み会の時に、ちょっと。」
「別れたのは5年前。離婚原因は、元旦那の不倫なんだけどさ、まぁ、わたしにも原因があったんじゃないかと思ってる。」
わたしの言葉に街風くんは、「どんな理由があっても、不倫した方が悪いですよ。」と言ってくれた。
「元旦那は、毎晩求めてくる人だった。でも、そこに愛はなくて、わたしは性欲を処理するただの道具でしかなかったんだよね。わたしが寝ていても、お構いなしにしてくるし、キスも無ければ抱きしめてくれることもない、、、触れもせずに、ただ挿れて自分だけ満足して、終わったらわたしに背を向けてすぐ寝ちゃうの。」
わたし、街風くんに何て話してるんだろう、、、
でも、街風くんはわたしの話を黙って聞いてくれていた。
「わたし、それが寂しくてさ。勇気を出して、自分から触れにいったことがあるんだ。でも"鬱陶しい"って跳ね除けられて、そこで一気に気持ちが冷めちゃって、元旦那を拒否するようになった。そしたら、帰りが遅くなるようになって、わたしの誕生日に不倫発覚。そして、離婚。最悪の誕生日だったなぁ〜!」
わたしはそう言って、笑い飛ばした。
まだ笑い飛ばせる程、傷は癒えていないのに。
「わたし自分の気持ちを伝えるのが苦手でさ。だから、もっと話し合えば良かったのかもしれない。だから、わたしきっと、、、恋愛とか結婚、向いてないんだと思う。それで仕事人間になろう!って決めて、離婚をきっかけに昇進試験受けて、主任になったんだぁ。わたしは一人で生きていこうって決めたの!」
すると、街風くんが「無理に笑わなくていいですよ。」と言った。
「えっ、、、」
「傷が癒えてないから、一人で生きていこうなんて思ったんですよね?」
そう言う街風くんの瞳が真っ直ぐで、わたしはつい「その通り」だと本音を溢しそうになってしまっていた。