契約の愛で結ばれたのは、まさかの敏腕CEO!?~独占欲滾るスパダリは極上溺愛で囲い離さない~
「僕が話すから、話を合わせてください」

 颯馬のひそひそとした声が降り注ぐ。
 茉莉花はコックリと頷いた。

 生まれて一度も恋人がいたことのない茉莉花は、どう振る舞うべきか全く分からない。
 颯馬に従う以外に術はなかった。



『ホテルで待ち合わせだから、少し早めに行って打ち合わせをしましょう』

 颯馬の提案に乗って、予定の一時間前にホテルに到着したはずだったのだ。
 それなのに――。

(それなのに、颯馬さんのご両親も早く来ていたなんて……!)

「楽しみ過ぎて早く来てしまったのだけれど、貴方達も早かったのね。ふふふ」

 おば様もとい、颯馬の母親が嬉しそうに茉莉花に微笑んだ。

 茉莉花が微笑み返すと、「たくさんお話を聞かせてちょうだいね」などと恐ろしい言葉を残してホテルの中へ颯爽と入っていった。

 颯馬のご両親に続いて、茉莉花達もホテルに入っていく。

「お待ちしておりました藤堂様。奥のお部屋をご用意しております」

 ホテルマンが丁寧にラウンジの奥の個室へと案内してくれる。
 茉莉花はもう腹をくくるしかなかった。

(とにかく颯馬さんの話に合わせれば大丈夫なはず。この日のために颯馬さんは私を助けてくれたのだから)



 茉莉花は颯馬に多大な恩があった。
 今日はその恩返しとして『恋人役』を引き受けたのだ。

(颯馬さんと出会った頃は、こんなことになるなんて思わなかったな……。ただの喫茶店マスターじゃないとは思っていたけれど)

 茉莉花は颯馬と出会った日のことを思い返していた。



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