契約の愛で結ばれたのは、まさかの敏腕CEO!?~独占欲滾るスパダリは極上溺愛で囲い離さない~
「ははは、いつもと逆ですね」
「ふふっ、なんだか新鮮です。喜んでもらえると嬉しい」

 茉莉花は再び席に戻り、テキストを開く。
 ちらりと颯馬を見ると、また彼と目があった。

 颯馬が物珍しそうに、茉莉花のテキストを指さす。

「それ、ドイツ語のテキストですか?」
「はい。スイスに行くのが夢で……ドイツ語を学んでいるんです。まだ全然ダメですけど」

 初心者向けのテキストをパタパタと振って笑うと、颯馬がいたずらっぽく微笑んだ。

「Ohne Fleiß kein Preis.(努力なくして成功はなし)ですね。茉莉花さんならすぐ話せるようになりますよ」

 茉莉花は目が飛び出るほど驚いた。

(ドイツ語話せるんですか!? どうして? 留学されていたんですか?)

 脳内に疑問が湧き上がるが、それらが口から出ることはなかった。

 代わりに、

「Danke schön.(ありがとうございます)」

 と答えて微笑む。
 茉莉花の心臓はドキドキと高鳴っていた。まるで初めて遊園地に来た子供のように。

(人に向かってドイツ語を話したの……初めてだ。なんだかくすぐったい)

 思わず笑みがこぼれる。
 二人は顔を見合わせて共にほうじ茶を飲むと、声を上げて笑い合った。

(颯馬さんとなら、上手く暮らせそう)

 茉莉花はなんとなくそう思えた。



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