不器用な溺愛

出会い

ノリのきいた真新しい制服に袖を通し、期待と若干の不安を抱えつつ今日から通うことになる青葉高校の正門を潜り抜ける


「おはよ~!!」

私の背中を『バンッ』とたたきつつ声をかけてきた子に視線を向ける

「ちま!おはよ~」

後ろで子供っぽい無邪気な笑顔を浮かべ、挨拶してきたのは中学校からの友達の足立 真咲(あだち まさき)だった。
男の子っぽい名前なことを気にしてるため、私は中学の時から彼女のことをちまと呼んでいる。


「はぁぁぁ、ドッキドキだよぉぉ
 友達出来るか不安すぎる!!!」

頭を抱えながらそんなことを口にするちまの方をじっと見る。
小柄ではつらつとしていることに加え、愛嬌のある整った顔立ちの彼女がそんな悩みを抱いていることに驚きが隠せない

「え!待って、ちまメイクしてる!!!
 可愛すぎるよ~~~~~♡」

そうなのだ!
目元や口元がほんのりほんのりピンクに染まりきらきらとしている。

「そー!!
 なんてったってこの学校には黒田先輩がいるからね」

ニヤッと口角を持ち上げ、悪い人のように微笑むちまに苦笑いを浮かべつつ私も黒田先輩について記憶をたどった。
苦い記憶とともに封印していた彼の存在がこの学校にあるのかと思うと、少しだけ背筋が冷たくなるような感覚に陥ってしまう

「とりあえず!
 クラス行こ!!」

悶々とした気持ちを抱えつつ、ちまに腕をひかれるままに自分たちのクラスに足を向ける
青葉高校は成績順にクラスが割り振られるため、合格通知書が届く時点で自分たちのクラスも伝えられているのだ
((ちなみに私とちまは同じクラス!




『ガラッ』

一年教室は二階のため階段を上り、教室の扉を開ける
「じゃね!!」


ちまと分かれて自分の席につく

『ガタっ』

椅子に腰かける
隣の席にはすでに一人の男の子が机に突っ伏すような形で座っていた。

がやがやと騒がしい教室の中で少し人見知りな性格の私はすることもなく隣の男の子のことをボーッと見ていた
机からはみ出るくらいの長い足を前に放り出し、少し長めの黒髪が光を受けてきらきらとしている


「席につけー、ホームルーム始めるぞ」

先生と思われる人が教室に入ってきたことを合図に、今までおしゃべりしていた生徒は一斉に各自の席についた
「・・・とまぁ、雑事はこのくらいにして、最初の登校日らしく最後に自己紹介をして終わろうか」

先生がそう言ったことを皮切りにまた教室中が喧噪に包まれる

(なにいおうかなぁ)

何の気なしにボーッと考えているうちに出席番号順の自己紹介がスタートした

・・・待って!私の横の人起きる気配ないんだけど・・・
ホームルーム前から、机に突っ伏した状態で寝ている隣の彼は実は今も寝たまんまなのだ

(よしっ)

彼の二個前の人の自己紹介が終わった時点で、彼のことを起こすことに決めた


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