桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

第19章:智香の挑戦

1. 書くことを決めた日
   東京に戻った智香は、書斎の机に向かっていた。
 パソコンの画面は白紙のまま。
 ——私は、本当に書けるのだろうか?
 編集者として、これまで多くの文章を扱ってきた。
 でも、それは"誰かの言葉"であって、"自分の言葉"ではなかった。
「……私が、書きたいものって、何だろう?」
 考えれば考えるほど、筆が進まなくなる。
 彼女は、そっと目を閉じた。
 ——10年間、言葉にできなかった想い。
 それを、書くべきなのかもしれない。

2. 10年前の記憶を綴る
   智香は、キーボードに指を置いた。
 ——そして、文字を打ち始める。
「あの日、私たちはすべてを失ったと思っていた。」
「でも、10年後、私たちは再び出会い、過去と向き合うことになった。」
 ゆっくりと、慎重に言葉を紡ぐ。
 彼女は、これまで誰にも話せなかった自分の想いを書いていく。
達也のこと。
将貴のこと。
10年間の後悔。
 それを、すべて言葉にしていく。

3. 初めての投稿
   数日後、智香は書き上げた文章をエッセイサイトに投稿した。
 タイトルは——
「10年目の再会」
 これが、彼女の初めての"自分の言葉"だった。
 投稿ボタンを押した瞬間、心臓が高鳴る。
「……大丈夫。私は、もう過去に囚われない。」
 智香は、小さく息を吐いた。
 ——これが、私の挑戦の始まり。

4. 予想外の反響
   次の日、智香がサイトを開くと、驚くべきことが起こっていた。
 「感動しました。」
 「私も、過去を引きずって生きていました。」
 「この文章を読んで、前を向こうと思いました。」
 ——コメントが、次々と届いていた。
「……読まれてる?」
 彼女は、驚きと同時に、胸が熱くなるのを感じた。
 "私の言葉が、誰かに届いている。"
 それが、何より嬉しかった。

5. 次のステップへ
  「智香、読んだよ!」
 その日、将貴から連絡が入った。
「えっ?」
「エッセイ、すごくよかった。」
「……ありがとう。」
「お前の言葉、ちゃんと届いてるよ。」
 その言葉に、智香の目から涙がこぼれそうになる。
「私……これからも書いていくよ。」
「ああ。」
 将貴が、優しく微笑んだ。
「お前の言葉は、きっと誰かの力になる。」
「……うん。」
 智香は、強く頷いた。
 ——私は、書き続ける。
 それが、私の選んだ未来だから。
(第19章・終)
< 67 / 78 >

この作品をシェア

pagetop