true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
さりげなく、マウントを取られている気がする・・・
「そ、そうですか」
「それにしても、今日からの出勤で、ここに連れて来られるなんて、優聖にえらく気に入られたのね?」
「少し前から面識はありまして・・・今日は勉強のためにと・・・」
「まぁ、私はそっちの事務所に、またお邪魔すると思うから、宜しく」
挑発するような口調で言い放つと、振り向いて背中を向けた。

ようやく、解放される・・・そう思った時、
「そうそう・・・」
一旦立ち去ろうとした足を止めて、振り返った。

「私・・・優聖のこと、ずっと好きだったの。ライバルになった時は、負けないから」
冷たい目線を浴びせた後、そのまま立ち去って席に戻った。

その後は、片桐さんと冴子さんと数名で、打ち合わせをする中、法律用語は勉強しているものの、それこそ弁論大会のように、飛び交う言葉をただ呆然と聞いていた。
「少し、休憩していいかな?」
片桐さんが話を区切り、皆は席を立って、各々が休憩を取った。

冴子さんが片桐さんに近づいて来た時、
「深澤さん、何か飲む?こっちにおいで」
私に気遣って、会議室の外に連れ出してくれた。

冴子さん・・・きっと、凄く睨んでるよね。
振り向くのが怖くて、そのまま片桐さんについて行った。

「ごめんね、息苦しい職場だよね?」
「いえ、皆さんのやり取りについていけませんが、とても刺激になります」
本当は、目が回りそうだけど・・・
「初日なのにハードな1日だけど、ここに来ることも無いから、もうしばらく我慢してね」
室内にあるコーヒーマシンでカフェラテのボタンを押し、差し出してくれた。

さっき、会議室で打ち合わせしている時、銀縁眼鏡の奥は、鋭い眼差しで、的確に意見を交わしていた。
安易に意見を言った人を、質問攻めにして、論じる場面もあり、会議室にピリッと緊張感が走った。
法廷だともっと、凜とした姿なんだろうなぁ・・・
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