true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
翌日は、依頼人の対応に追われ、深澤さんと話をするのは、殆どスケジュールの調整だ。
あっという間に定時になると、深澤さんが帰り、加東君が1人残業をしていた。

「急ぎの案件で残ってもらって悪いね」
「大丈夫ですよ。昨日、楽しい時間を過ごしたので、パワー全開です」
「楽しい時間?」
「はい、深澤さんを映画に誘って、2人で楽しんだので」
コソコソしてたのは、そのせいか・・・

「恋人の俺に黙って行ったんだね?」
「付き合って無いでしょ?こまさんやご家族を誤魔化せても、いつも見ている僕は、分かりますから」
「そうか・・・嘘ついて悪かったね。色々事情があったんだ」
「いいんです。でも、今の『嘘』という言葉を聞いて、安心しました」
「安心?まさか」
「僕、深澤さんが好きです。昨日は言えなかったけど、告白します。いいですよね?」

いい?・・・わけないだろ・・・
鍵が完全に壊れ、解け落ちた鎖。
『抑制』が解放された。

「僕は人としても上司としても、片桐さんのことは尊敬しています。ただ、好きな人へは遠慮はしません。真っ向勝負します」
2人の視線がぶつかる。

「とにかく、僕は、片桐さんと深澤さんの偽恋人同士が、どんな事情でどうなろうと知りません。深澤さんに告白します。付き合うことになれば勿論・・・もう恋人ごっこは止めてください」
「・・・そうだね。そろそろ、俺も限界だしね」
「嘘が嫌いですもんね。あっ、私情と仕事は、分けますから。お先に失礼します」

普段見ない、男らしい一面に感心したものの・・・
嘘は嫌いだ。さすがに、よく分かっているね。

加東君、ありがとう。
解放するよ。
俺が彼女に対する気持ちを・・・
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