ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜
 集合時間になると、担当の添乗員・冴木さんが私たちを呼び集めた。
 スーツ姿は隙がなく整い、その立ち居振る舞いからは長年の経験がにじみ出ている。
 実習生は、私と百合香を含め全員で五人。
 一台のバスに乗り、役割をローテーションしながら実習を進める。

「今日は、皆さんにはサポート役として動いてもらいます。とはいえ、お客様の前ではプロのつもりで。自信を持って行動してください」

 冴木さんの言葉に、私たちは「はい!」と元気よく返事をして一斉に頷いた。

 バスの乗客は、年配の夫婦や女子旅グループ、家族連れが中心。
 私の担当は、主に後方座席のフォローだった。

「それでは、皆さんお待たせしました! 本日はご参加ありがとうございます」

 冴木さんの流れるようなアナウンスに続き、私たち実習生も簡単な挨拶をした。
 普段、大学の授業で発表するのとは違い、お客様に向かって話すのは思った以上に緊張した。

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