ライバル店の敏腕パティシエはスイーツ大好きな彼女を離さない〜甘い時間は秘密のレシピ〜
17・キスの余韻
百貨店への出店は正式に断り、私たちは高菱本社ビルを後にした。
ビルのエントランスを出ると、外の空気はひんやりとしていて、先ほどまでの張り詰めた空気が嘘のようだった。
「でも愁さん、どうして風間さんが答えを知っているとわかったんですか?」
謹二さんと別れた後、並んで歩きながら私は訊ねた。
すると、愁さんは足を止め、ポケットから缶ケースを取り出してみせる。
「……これだよ」
缶ケースを開けると、中には四角くて黒い、小型の機械のようなものが入っていた。
「これは?」
「盗聴器」
「とっ……盗聴器!?」
それをシャテーニュの厨房に取り付けたということなのだろうか?
そう問うと、愁さんは首を横に振った。
「天音さん、君のカバンの中に入っていた」
「い、いつの間に……?」
私が風間さんと直接会ったのは、シャテーニュの前でのあの時だ。
そういえば、やけに風間さんが近づいてきて、耳元でなにか言われた。
その時に入れられたなんて、全然気が付かなかった。
「多分、本当は厨房に仕掛けたかったんだろうね。あの日、急に訪ねてきたから。でも僕がずっとそばにいたから、できなかったんだと思う」
愁さんは、落ち着いた声で説明してくれた。
「そこで天音さんに会って思い立ったんだろう。彼女が天音さんのカバンになにか入れたように見えたんだ。申し訳ないけど確認したら、案の定だったよ」
「確認……って、いつ?」
「その後すぐに、天音さんがお茶を淹れてくれるって、一旦離れただろう? あの時だよ」
「えええええっ!?」
そんな短時間で!? カバンの中を見られていたなんて、恥ずかしい!
変なものは入っていなかっただろうか?
ビルのエントランスを出ると、外の空気はひんやりとしていて、先ほどまでの張り詰めた空気が嘘のようだった。
「でも愁さん、どうして風間さんが答えを知っているとわかったんですか?」
謹二さんと別れた後、並んで歩きながら私は訊ねた。
すると、愁さんは足を止め、ポケットから缶ケースを取り出してみせる。
「……これだよ」
缶ケースを開けると、中には四角くて黒い、小型の機械のようなものが入っていた。
「これは?」
「盗聴器」
「とっ……盗聴器!?」
それをシャテーニュの厨房に取り付けたということなのだろうか?
そう問うと、愁さんは首を横に振った。
「天音さん、君のカバンの中に入っていた」
「い、いつの間に……?」
私が風間さんと直接会ったのは、シャテーニュの前でのあの時だ。
そういえば、やけに風間さんが近づいてきて、耳元でなにか言われた。
その時に入れられたなんて、全然気が付かなかった。
「多分、本当は厨房に仕掛けたかったんだろうね。あの日、急に訪ねてきたから。でも僕がずっとそばにいたから、できなかったんだと思う」
愁さんは、落ち着いた声で説明してくれた。
「そこで天音さんに会って思い立ったんだろう。彼女が天音さんのカバンになにか入れたように見えたんだ。申し訳ないけど確認したら、案の定だったよ」
「確認……って、いつ?」
「その後すぐに、天音さんがお茶を淹れてくれるって、一旦離れただろう? あの時だよ」
「えええええっ!?」
そんな短時間で!? カバンの中を見られていたなんて、恥ずかしい!
変なものは入っていなかっただろうか?