すべてはあの花のために①
「……どういうことだ」
「そのままの意味ですよ? だってあなた、今でも変わらずに、彼女のことが好きでしょう? それが、わたしはとても嬉しいんです。だから、彼女と大事にしていたこの場所から、離れられないんでしょう?」
「でもオレは、変わらなかったから、あいつを引き止められなかった」
「……それはね先生。変わらなかった、って言わないんですよ。わたしが代わりに言いましょう。あなたは、彼女とその両親、婚約者とその両親、親戚と」
会わなかった。話さなかった。
そして、好きなんだって、言わなかった。
「自分ではわかっているんでしょう? 変わらなかったんじゃなくて、勇気がなかっただけなんだって。だからそこまで行けなかった。踏み込んで行けなかったんだ! 違うか? 違わないだろ!!」
ねえ先生。あなたは、彼女ときちんと話をしましたか? 彼女のご両親と話しましたか? 婚約者さんとも、その両親とも話しましたか? 一回だって、彼女に行くなって言ったんですか? 会いたいって、好きだって言ったんですか?
言ってないんですよね? 全部彼女の方からだったんじゃないんですか?
会いたいって。話したいって。好きだって。
あなたは何もできなかったわけじゃない。何もしなかったんだ。踏み込む勇気が、なかったから。
「最近はまあ、あからさまに彼女のこと避けてましたからね。あーこいつはとんだヘタレ野郎だなって心底思いましたよ。まあ、それは途中で諦めてしまったチカくんも同じですけど。……そんなだから、あなたたちは気付かないんだ」
葵は一度、大きく息を吐いてからまた話し出す。
「チカくん。本当に自分は何もできなかったと、届かなかったと、そう思ってるのか? 彼女には、ちゃーんと届いていたよ。だって、ちゃんとメッセージを残してるじゃないか。あなたたちは知っているんじゃないのか? いや、絶対聞いているはずだ。なのに、そんなんだから気付かなかったんだ」
【5月某日 徳島の某ホテルにて 彼女たちの結婚式・披露宴が行われる】
「歓迎会の日取りと、結婚式・披露宴の日程がもろ被りしてんですよ。そして、彼女が提案した旅行先のプランは四国だった。……チカくん。この意味わかる? もしかしたら、ここは選ばれなかったかもしれない。でも気付いて欲しいって、そんな意味が込められてるのがわかる? これは、彼女には届けられなかったか? 違うだろ? ちゃんと届いてるから、彼女はあんたたちに気付いて欲しくて、このプランにしたんだ。彼女のどこが諦めている? 諦めてないじゃないか! あんたたち二人に『助けて欲しい』って。そう言ってるんじゃないのか!」