すべてはあの花のために①

 そう言う彼の大きな手が、首の後ろから後頭部をまるで掴むように差し込まれ、そのままぐっと引き寄せられた。


「んっ……?!」


 わけがわからないまま、だんだん深くなっていく口付けに、すぐ立っていられなくなる。


「(……意味が、わからない。意味がわからない。っ、意味がわからない……っ!)」


 折角気持ちに整理をつけようと。
 せめてこの式が終わるまでは好きでいたいと。いようと。

 ……そう、思っていたのに。


「(こんな、こと。されたら……)」


 もう立ってはいられないと、限界の意味を込めて彼の胸を押し返す。けれど簡単に取られてしまったその手は、あっという間に壁に縫い付けられた。


「んっ。……っ、はあ。んっ」


 もう、逃げられない。逃してくれない。

 だんだん息が苦しくなる。生理的な涙がこぼれてくる。頭に白く靄がかかっていって……もう、何も考えられない。


 やっと離れてくれた彼の腕の中で、酸素をひたすら求めた。


「はあっ。はあ。……っ、はあっ」

「キサ」

「はあ。……な、なに……?」

「お前は、変わらなかったのか」

「……変わらないよ。これから先もずっと」

「オレもだ」

「ちょっ。ほんとに。意味がわからないんだけど……」

「離れたら、何か変わるかと思った。でも変わらなかった。変われなかった。だからオレは、最初っから変わらずに、お前が好きだよ」

「……!(なによ。……っ、なによそれっ)」


 ぽろぽろと、大粒の涙がこぼれ落ちているのが嫌と言うほどわかってしまった。


「あ、あたしはっ。……っ、とーまと。けっこんを……」

「残念ながら、それもさせねーよ」


 彼は流れる涙を、そっと拭ってくれる。


「お前は? お前は、オレへの気持ちは変わったのか」

「そんなの。……かわる、わけ。……っ、ない!!」

「……そっか」


 そう言うと、彼はまた抱き締めてくる。


「あたしもっ。……きくちゃんが。だいすきだ……っ!」

「ふっ。……知ってるっつーの」


 そう言ってまた。今度ははじめから、深く深く、キスを落とされた。


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