クールなエリート警視正は、天涯孤独な期間限定恋人へと初恋を捧げる

「近江さんからだ!」

 思いがけず連絡が来たので気持ちがはしゃいでしまった。
 画面を覗く。

『本日は署で晩酌。明日は非番。予定はどうだろう?』

 端的な文章で事務的な報告のようでもあるが、正直これまで連絡皆無な状況だったので嬉しい。
 わくわくしながらスマホをタップする。

「『明日は何もありません』」

 すると、すぐに返事がきた。

「『だったら、明日、引っ越しの手伝いにくる』」

 笑顔の女の子のスタンプも一緒に送る。
 また返事があった。

『了解した。明日九時までにマンションへと戻る』

 即座にタップする。

「『よろしくお願いします』」

 すると、すぐにまた返事があった。

「ええっと、『管轄で婦女暴行の事件が最近増えている。外出は控えた方が良い』か」

 ジムに向かおうかと思ったが、近江からの忠告を受けて、止めることにした。
 一応、外出時には近江の部下たちの見張りがあるのだが、事件があるのなら、そちらに気を配ってもらった方が良いだろう。

「『分かりました』っと」

 すぐに既読がついたけれど、それから返事が戻ってくることはなかった。
 少しだけ盛り上がっていたので、返事がなくなってしまって少々寂しさを感じたが、今までで一番の盛り上がりを見せたと言えよう。

「なんだか、恋人同士っぽい感じだったな」

 今度またジムに向かうだろうから、準備していたバッグの荷物はそのままにして、クローゼットの中に仕舞った。
 くすみピンクのサテン生地のルームウェアへと着替えると、ベッドに向かって跳びはねる。

「明日は引っ越しか」

 近江のマンションへと引っ越す場面を想像すると、まるで子どもの頃の遠足前みたいに胸が弾んだ。
 ぬいぐるみを抱きかかえると、ベッドの端から端までゴロゴロと寝転がった。

「楽しみだな」

 今夜ははしゃいで眠れないかもしれない。
 そんなことを思いながら、部屋の電気を消灯したのだった。

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