雪くんは、まだ足りない。
遊馬、と呼ばれたその人は先生に連れられて1年生の列の間を通る。
近くまで来た時によりはっきりと顔を見ることが出来た。
「…かっこいい」
「…あ?」
「ひ…!」
わたしの横を通り過ぎる時、思っていたことが口から出てしまったみたいで睨みつけられる。
やば…!
わたしはとっさに口を両手で塞ぐ。
睨みつけられているその目はカラコンでも入っているかのように色素の薄い色。
左目の下には涙ぼくろ。
耳にはいくつものピアスが付けられていた。
「……君は…」
さっきまで睨みつけていたはずなのに。
驚いたように目を見開いた遊馬くんはわたしに向かって何かを言いかけた…時。
「遊馬 雪」
マイクを使って生徒会長が名前を呼ぶ。