人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
「何が面白い」
「こんな庶民的なところに宍戸ドクターがいるなんて変な感じがします」
「そうか? 案外に似合っていると思うけどな」
 私は首を左右に振って否定をしていた。
「山井さんは何か勘違いをしていると思う」
「勘違いですか?」
 彼は深くうなずいた。
 そのタイミングで牛丼が運ばれてくる。
「俺はここの常連だ。紅しょうがをたっぷりかけて食べるのが大好きだ」
「そうだったんですね?」
 案外庶民的なところもあって、親しみやすい。
 私とは合わないと思ってもらうために、ここに連れてきたのに逆効果だ。
 こういう一面を持ち合わせているのを知って距離が縮まったように感じる。
 私も宍戸ドクターのことを好きになっていいのかもしれない……なんて思ってしまった。
 牛丼を大きな口で頬張った。こういうわんぱくな姿はレアだ。
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