無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?
もう一人の婚約者候補
♡♡♡
八月下旬。夏休みは、残すところ数日になった。長かった夏休みも終わりに近付くと寂しい。
でもーー今年の夏休みは、いつもみたいに学校の勉強、一般常識、マナー教育など退屈なものばなりではなかった。
翡翠くんと、プールで遊んだり、大会で頑張っていた彼を見れたり、楽しかった。それに、今はーー。
「ひ、翡翠くんっ。練習、お疲れ様」
『あぁ、ありがとう』
彼と一日十数分、毎日電話をするようになった。全国大会への出場が決まり、練習の他に県外での練習試合や合宿が急遽決まった。
だから、大会の後は会えていない。でも、電話をすることで、遠くにいるはずなのに近くにいるようなーー不思議な感じになる。
『紫は、今日何かあったか?』
「ううん、まだ」
『まだ?』
「うん。今日は、パパーーじゃなくて、父が家で食事をする日だから、夕食を一緒に頂くの。久しぶりだから、楽しみで」
パパは、忙しいから家に帰ってこないこともしばしば。でも、ママや私に何かあった時は必ず駆けつけてくれる。そんな人だから、私達の家族仲は良好で楽しみにしているのは、私だけでなくママも。それをつい、翡翠くんに言っちゃうくらい。