逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「結婚とはいっても、もちろん寝室は別だ。主寝室は君に譲るよ。僕は家事全般が得意だし、忙しいときには家事代行に頼むことにしている。君は家賃も生活費も払わなくていいし、家事からも解放される。どうだい、悪い話じゃないだろう?」

 蓮さんの提案を聞いているうちに、その生活をイメージしてしまっている自分がいた。

 家事の必要がなく、家賃もかからない。仕事が忙しくなっても、家に帰ると温かい灯りと食事が待っている。

──確かに、悪くないように聞こえる。

「でも、私、家事が好きかもしれませんよ? 今だって、一人暮らしのアパートで、料理や掃除、洗濯を楽しんでいるし、不満なんて特に……」

 蓮さんは見透かしたように笑い、首を振った。

「さっき、『ほとんど家に帰れなくて、レトルトとコンビニ弁当で生きてる』って話していたじゃないか。それに、『片付ける時間がなくてエアコンのリモコンが見つからない、冬をどうやって乗り切ろう』とも」

 そんなこと……確かに言ったかも。美味しい料理を前にすると、つい喋りすぎてしまう。これが私の悪いクセだ。

「それに、僕が家事を引き受ければ、君は家でシナリオを書く時間を作れるだろう?」

 うん。それは確かに、そうだ。

 思わず両手で顔を覆った。料理が美味しすぎて、お酒を飲みすぎた自覚はある。

 普段なら、酔った状態で重要な決断はしないし、明日になればきっと、私はこの提案にノーと言うだろう。

 だけど……。

──悔しかったら、あの作品を超えるものを作ってみろ。それができるのなら。

 ふと、航の声が耳に響いた。こんなに傷ついた夜だからこそ、できる決断があるのかもしれない。
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