逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「お茶でも入れてくるよ。ちょっと待ってて」

 蓮さんがキッチンに向かった。私はソファの背ににもたれかかる。

 彼がキッチンでお茶を用意する、カチャカチャという小さな音を聞いていると、何だか安心して、またしても睡魔が襲ってきた。

 ああ、ちゃんとベッドで寝なきゃ……。連さんの前で寝落ちなんて……。

 だけど、そうだ。ベッドにはまだシーツも敷いていない。レストランから帰ってきたらやればいいと、買ったばかりのシーツをベッドの上に投げたままだった……。

 眠りと覚醒の(はざま)に存在するのは、ネバーランドだっけ……。私は今にも消えそうな意識の中、ふとそう思った。

 だとしたら、私も今、ネバーランドにいるのかな。ふわふわして、なんだかとっても気持ちがいい場所だ。

 隣に誰かが座り、その重みで私の体が傾いて、肩にもたれかかった。心地よいぬくもりと、太陽をたっぷり含んだ木綿のようないい香りに包まれて、一瞬で安らぐ。

 私はそのぬくもりを優しく抱きしめて、息を深く吸い込んだ。

 ああ、手帳にメモしたい。覚えておきたいな、この匂い……。

 心の中ではそう思うけれど、体はもう動かず、意識はどんどん遠くへと流れていく。

 バッグから手帳とペンを出すこともできないまま、柔らかな温もりに包まれて、私は自然と目を閉じた。

 夢の中で……もう少しだけ、蓮さんと話せたらいいのに。
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