逆プロポーズではじまる交際0日婚! 〜狙うのは脚本家としての成功とXXX
「薫……」

 航が私の手を取ろうとする。私はそれを振り払った。

「あなたのアシスタントの件は正式にお断りいたします。もし先生が許さなければ、私は事務所を辞めます」

 うっすらと涙の浮かんだ目で、航は私を見つめる。──見捨てているんじゃないって、彼が分かってくれればいいけど。

 オフィスへ繋がるドアを開けると、さっきまでの重苦しい空気が嘘のように軽くなった。

 私は自分の席に付くと、バッグから手帳を取り出し、ペンを走らせた。

──最善の選択は、さまざまな試行錯誤を重ねた末にたどり着くものだ。

 なかなかいい。書き終えたら、なんだか誇らしい気持ちになった。そして不意に、蓮さんの笑顔を思い出した。

 ああ、今日も家に帰ったら蓮さんがいる。とびきりのご褒美だ。

 私は1秒でも早く仕事を終わらせるため、キーボードに両手を置いた。
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