そばにいるって、君が忘れないように
なんか私の名前を誰か呼んだかな。
それに聞き覚えのあるような声。
いやいや、たぶん私ではない。
これはきっと幻聴だろう。
私のことを知っている人など、ここにはいないのだから。
「おい、のどか」
私の肩に誰かの手が置かれた。
「ん?」
右を向くと、高身長で少しチャラそうな男子が私を見下ろして立っていた。
「げげげ! 武……」
「なにが、げげげ、だよ」
隣に立っていたのは、同じ中学校出身の南方武だった。
中学校では校内トップの顔面偏差値を誇る顔を持ち、そのうえ運動神経抜群のこの最強男子武は私の幼稚園からの幼なじみだ。
「なんで……」
「昨日だって、俺が横にいるのに全然気づかねぇし」
「え? 一緒のクラス?」
「そうだよ、となりの席」
「えっ、となりの席?」
そうか、昨日はあまりの落ち込みで教室の外しか見てなかったから全然隣の人なんぞ見る気もなかった。
「んじゃ、これからもよろしくな。の、ど、か」