復讐殺人日記
「悪かった!」
どれくらいそうやってひたすら謝っていただろうか、ふいに部屋の中から冷気が消えて私と貴斗は顔を上げた。

今まで目の前に立っていた保人の姿が消えている。
寒気もスッと消えていくのがわかった。

「許してもらえた?」
誰にともなく呟く。
「いや、わからねぇけど、でも消えたよな」

周囲を見回してみてもオレンジ色の夕日が差し込んでいるだけで、黒い影は見えなかった。

強い視線も感じない。
ヨロヨロと立ち上がり、部屋の出口へと向かう。
許してもらえたのなら一刻も早くこの家から出ていくだけだ。

もう一秒だってこんな場所にはいたくない。
その思いで足を前にすすめるが、まだ少し震えていて何度も階段から落ちてしまいそうになった。
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