復讐殺人日記
「どうした?」
「体が勝手に動くの!」
私の体はすでに玄関に下りてしまっている。

靴も履かずにそのまま外へ出ようとドアノブに手が伸びていく。
「くそっ。やめろ保人!」

見えない保人へ向けて叫びながら、貴斗が私の体を抱きしめて動きを止めようとする。

けれど私はそれを振り払って外へと飛び出してしまった。
自分でも信じられないくらいの力が出ていて全身が冷たくなる。

「助けて! 誰か止めて!」
素足のまま飛び出して足裏に小石が食い込んで激痛が走る。

それでも止まることができない。
速度はどんどん早くなっていき、気がついたら走り出していた。

前方に瓶の破片が見えて「ひっ」と小さく悲鳴を上げる。
止まることができなくてもせめて避けることなら……!

そう思ったけれどダメだった。
私は右足でその破片を思いっきり踏みつけてしまったのだ。

大きな破片がザクリと足裏に食い込むのがわかる。
皮膚を切りさいて入り込んだ破片がぐいぐい奥へ入っていく。

激痛に何度も倒れそうになるのに体はそれを許さない。
きっと、瑞穂のときもそうだったんだろう。
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