復讐殺人日記
「それは、やめてください」
震える声で訴えかけてくる。

だけどもちろん瑞穂に聞く耳などなかった。
「返してほしいか?」

ノートをひらひらと振って挑発している。
「返してください」

「どうしようかなぁ」
瑞穂が歌うようにつぶやいたかと思うと、ノートをフェンスより高く投げたのだ。

ノートは空を舞ってフェンスの向こう側へと落ちていく。
「あぁ!」

保人がすぐに駆け寄ってフェンスにすがりつくけれど、もう遅い。

ノートはグラウンドで部活動をしている生徒たちの中に紛れてしまった。

土埃が舞い上がるグランドで、いい感じに汚れているはずだ。
「あ~あ、大切なノートだったのに残念だね?」
私はそう声をかけながら散乱している教科書を取り上げた。

2年生にあがってから保人のノートや教科書は何度も破いて捨てて、落書きをして使い物にならなくしてきた。
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