復讐殺人日記
ゆっくりゆっくり、でも確実に上へと登っていく。
日奈子がクスクスと笑いながらその様子を動画に収めている。

「今度はスカートでも履かせて登らせてみようか」
瑞穂の提案に笑いが漏れる。

そのとき保人がフェンスの一番上まで登りきっていた。
あとは下りて教科書を取り、戻ってくるだけだ。

でもそのときだった。
突然強風がふいてきて教科書がバラバラとめくれた。

そのままバランスを崩してグラウンドへと落下していく。

「あはは! 残念だったなぁ、せっかくそこまで登ったのにな!」
貴斗がこらえきれずにお腹をかかえて大声で笑う。
それにつられて私たちも笑い始めた。

保人はフェンスにまたがった状態で青ざめて動くことができなくなっている。

今回はグラウンドに落ちただけだから、拾いに行けばまた使うことができる。

「もういいから、下りて来いよ」
ひとしきり笑った貴斗が保人にそう声をかけたときだった。

今までで一番強い風がふいた。
立っていても少し体を持っていかれるくらいの強風だ。

「……っ」
咄嗟に両腕で顔を隠してきつく目を閉じた。
ホコリを吸い込んでしまわないように呼吸も止める。
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