このインターネットの投稿について知りたい人は、配信に集まってください。
ホラーずきが集まるSNS内での配信 録音音声④
ニコ「佐鳥さん……。どういういうことなんですか?」
佐鳥「何が?」
ニコ「有栖川さんに何かしたのは、佐鳥さんなんですか?」
佐鳥「……うーん」
ニコ「ごまかしてないで、答えてくださいよ」
レイン「ニコさん。ぼくが説明しますよ」
ニコ「レインさん。レインさんは何を知ってるんですか?」
レイン「ぼくは、これまでに栄みらい市で何が行われているのかを知るために、ひとりで調査してきました。なので、あそこで何が行われているのかは、だいたい知っています。いま、ニコさんのDMに送ったものを、読んでみてください」
ニコ「これは……『むしうた 沼井の教え』?」
レイン「昭和の時代にぼくたちと同じ、十二歳の子が書いた日記です。それを読めば、だいたいのことを把握できると思います」
ニコ「わかりました。読んでみます」
佐鳥「へえ。ここまでやったのには、何か理由でもあるの? レインさん」
レイン「佐鳥さん。あなたは、沼井家の信者だ。それを隠して、SNSでこんな配信をするなんて……」
佐鳥「だめだっていうの? そんな権利が、きみにあるの?」
レイン「栄みらい中学校のあの事件。グリッド投稿の件……あなたは嘘をついている」
佐鳥「ええ? どんなメリットがあって、ぼくが、どんな嘘をつくっていうの?」
レイン「坂巻伊呂波があのグリッド投稿をしたわけに、もっともらしい理由をつけていたけれど、あんなのは嘘だ。あのグリッド投稿をしたのは、あなただ。佐鳥さん」
佐鳥「……ええ? どうしてそんなことを、ぼくがしなくちゃいけないの?」
レイン「10月4日のSNSの投稿で、『爪みたいなのない?』というポストがあった。あれは、ぬらつぬのかけらだ。あなたが写真をとり、分割した画像に編集し、坂巻さんのピンスタアカウントから投稿したんだ。みんなに見てもらうために」
佐鳥「動機は?」
レイン「もっともっと、栄みらい市に人を集めて、ぬらつぬにするためだ。ぬらつぬは、人を魅了する。においだけじゃなく、見ただけでも、魅了されるものはいる。坂巻さんのアカウントから流せば、さらに、センセーショナルな情報として、多くの人の目に留まるだろうしな」
佐鳥「へえ」
レイン「他人事だな。ぬらつぬは、沼井の言霊で宝石にされ、蟲歌に選ばれたものたちによって砕かれたものだ。それを特産品として、栄みらい市は売りさばいている。都市伝説ではなく、事実だろう」
佐鳥「蟲歌は、なるべく沼井の血筋に近いものたちから選ばれる。素質あるものとしてね。よろこばれるべき肩書きなのだけどなあ。最近、どうも脱走するものが多い。ふしぎなことに。近年でも、いたなあ。瑞城という一家だ。息子がいま、行方不明になっているんだよね」
レイン「有栖川さんは、瑞城一家の捜査をしてくれていたんだ。沼井のまわりは全員調査対象だった。もちろん、あなたもだ。佐鳥さん。だから、この配信をいつも聞いていた。なにか、情報をいうかもしれないと思って」
佐鳥「アリスさんが刑事だったなんて、驚きだよ。ねえ、ニコちゃん」
ニコ「……読み終わりましたよ。いまのふたりの話も含めて、信じられないことばかりで。何から話したらいいのか……」
佐鳥「はは。でももう、話すことなんて出つくしたんじゃないかな。ぼくも、レインさんも」
レイン「なぜ、こんな配信をしていた? あなたの目的はなんだったんだ」
佐鳥「……ぼくの目的は、ずっとひとつだけですよ」
ニコ「ひとつだけ……?」
佐鳥「沼井の家の繁栄です。そのためにも、配信で発信し続けなくっちゃ。沼井の言霊を……『黄色』、『黄色』、『黄色』、『黄色』、きいろっ……あああああききききいろきいろきいろきいろきいろきいろろろろろろ」
――
ここで、録音は途切れている。
ぼくの調査は、ここでいったん終了とする。
どこからか、においが、する。
かいだことのない、かいではいけない、においが――。
おわり
佐鳥「何が?」
ニコ「有栖川さんに何かしたのは、佐鳥さんなんですか?」
佐鳥「……うーん」
ニコ「ごまかしてないで、答えてくださいよ」
レイン「ニコさん。ぼくが説明しますよ」
ニコ「レインさん。レインさんは何を知ってるんですか?」
レイン「ぼくは、これまでに栄みらい市で何が行われているのかを知るために、ひとりで調査してきました。なので、あそこで何が行われているのかは、だいたい知っています。いま、ニコさんのDMに送ったものを、読んでみてください」
ニコ「これは……『むしうた 沼井の教え』?」
レイン「昭和の時代にぼくたちと同じ、十二歳の子が書いた日記です。それを読めば、だいたいのことを把握できると思います」
ニコ「わかりました。読んでみます」
佐鳥「へえ。ここまでやったのには、何か理由でもあるの? レインさん」
レイン「佐鳥さん。あなたは、沼井家の信者だ。それを隠して、SNSでこんな配信をするなんて……」
佐鳥「だめだっていうの? そんな権利が、きみにあるの?」
レイン「栄みらい中学校のあの事件。グリッド投稿の件……あなたは嘘をついている」
佐鳥「ええ? どんなメリットがあって、ぼくが、どんな嘘をつくっていうの?」
レイン「坂巻伊呂波があのグリッド投稿をしたわけに、もっともらしい理由をつけていたけれど、あんなのは嘘だ。あのグリッド投稿をしたのは、あなただ。佐鳥さん」
佐鳥「……ええ? どうしてそんなことを、ぼくがしなくちゃいけないの?」
レイン「10月4日のSNSの投稿で、『爪みたいなのない?』というポストがあった。あれは、ぬらつぬのかけらだ。あなたが写真をとり、分割した画像に編集し、坂巻さんのピンスタアカウントから投稿したんだ。みんなに見てもらうために」
佐鳥「動機は?」
レイン「もっともっと、栄みらい市に人を集めて、ぬらつぬにするためだ。ぬらつぬは、人を魅了する。においだけじゃなく、見ただけでも、魅了されるものはいる。坂巻さんのアカウントから流せば、さらに、センセーショナルな情報として、多くの人の目に留まるだろうしな」
佐鳥「へえ」
レイン「他人事だな。ぬらつぬは、沼井の言霊で宝石にされ、蟲歌に選ばれたものたちによって砕かれたものだ。それを特産品として、栄みらい市は売りさばいている。都市伝説ではなく、事実だろう」
佐鳥「蟲歌は、なるべく沼井の血筋に近いものたちから選ばれる。素質あるものとしてね。よろこばれるべき肩書きなのだけどなあ。最近、どうも脱走するものが多い。ふしぎなことに。近年でも、いたなあ。瑞城という一家だ。息子がいま、行方不明になっているんだよね」
レイン「有栖川さんは、瑞城一家の捜査をしてくれていたんだ。沼井のまわりは全員調査対象だった。もちろん、あなたもだ。佐鳥さん。だから、この配信をいつも聞いていた。なにか、情報をいうかもしれないと思って」
佐鳥「アリスさんが刑事だったなんて、驚きだよ。ねえ、ニコちゃん」
ニコ「……読み終わりましたよ。いまのふたりの話も含めて、信じられないことばかりで。何から話したらいいのか……」
佐鳥「はは。でももう、話すことなんて出つくしたんじゃないかな。ぼくも、レインさんも」
レイン「なぜ、こんな配信をしていた? あなたの目的はなんだったんだ」
佐鳥「……ぼくの目的は、ずっとひとつだけですよ」
ニコ「ひとつだけ……?」
佐鳥「沼井の家の繁栄です。そのためにも、配信で発信し続けなくっちゃ。沼井の言霊を……『黄色』、『黄色』、『黄色』、『黄色』、きいろっ……あああああききききいろきいろきいろきいろきいろきいろろろろろろ」
――
ここで、録音は途切れている。
ぼくの調査は、ここでいったん終了とする。
どこからか、においが、する。
かいだことのない、かいではいけない、においが――。
おわり