眠る彼女の世話係

さん

 朝目が覚めると、彼女は眠ったままだった。時間はもうすでに朝の8時をすぎており、大学があることを思い出して俺は慌てて彼女の家を出た。

 
「で、どうだった?しゃべれた?あの女の子と」

 昼、学食に陸斗と陽太と俺は集まっていた。いじり倒す気満々なのか、陸斗はいつもよりも身を前に乗り出している。

「話せたよ、一応」

 自分たちの予想に反した返事に二人は面食らった顔をした。ことごとく失礼なやつらだな……なんて内心思いながら、彼女の話をする。

「飲んでた薬、睡眠薬だった。本人から直接聞けてないけど、家族が交通事故で亡くなってるっぽくて」

 きっと死にたいのかな、あの子は。その言葉は喉で引っかかって出てこなかった。高校生なんてまだまだ子供だ。まさか自分の家族が自分だけを置いて死んでしまうなんて、想像もしていなかっただろう。思えば思うほど、だんだんと心に落ちる影は濃くなっていく。

 黙ってしまった俺の背中を、陽太はポンと叩く。顔をあげると、なんだかちょっと泣きそうになっている陸斗と目が合った。

「……七野りるはの小説読むかなって思って持ってきたんだけど、読む?夏樹」

 陸斗からいくつかの小説を受け取って、そのあと3人でどうでもいい話をして、俺は家に帰った。
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