すべてはあの花のために②
今度お邪魔する約束をして、車から降りた二人に続く。
「だからお嬢ちゃんは、『うちに来たら嬉しいと思う』なんて言ったんだな」
「はい。シントもいたので」
借りていたロケットを返すと、彼は手に戻ってきたそれを嬉しそうに自分の首へと掛ける。
「何かあったら言えよ。主人より先に助けに行ってやるから」
「え。楓?」
「ふふっ。それじゃあ、その時は遠慮なく」
そうして去って行く二人に『さようなら』と挨拶を告げ、姿が見えなくなるまで見送る。二人の帰り道は、明るく照らされてるように見えた。
「葵。まだ、次の約束を取り付けるのが怖いの」
「……ううん。『まだ』じゃなくて『もう』だからかな」
「それも俺は、変えてやるつもりでいるけど」
そんなシントに、葵はただ、微笑みを返すだけ。
「帰ろっか、シント」
「何。そんなに襲われたいの」
「襲ったら解約するけど」
「さ、さあお嬢様、帰りましょう」
「すでに襲いかけたので減俸です」
「きょ、今日は月が綺麗ですね~」
「今日は新月だよ」
「もう、どうしたらいいの……」
「今まで通りで」
普通が一番だと伝えると、納得できなかったのか彼は大きなため息を吐いていた。
「帰りましょうか、お嬢様」
「帰ったらお風呂にしよー」
「誘ってんの?」
「違います」
「小さい頃は一緒に入っ――」
「入ってないから。誤情報流さないで」
「冗談はさておき、今日もちゃんとやることやって寝るんだよ?」
「はーい」
そうして、やっと二人のコントが終わったとさ。
「ていうか、頭大丈夫なの?」
「うん! わたし石頭だから!」
「そ、そうだったっけ」
かなり痛い音聞こえてたけど。
弟の頭は大丈夫だっただろうかと、道明寺に帰っても心配で眠れなかったシントだった。