超人気美男子に目を付けられた平凡女は平和な寮生活を求めて苦悩する
第53話 天才は凡人と話が合わない
シンは談話会に出席していた。
男女各5名ずつの食事会である。
主に相手が決まっていない者が選ばれるため、シンは4度目の出席だった。
シンは談話会が非常に苦手である。
あまり知らない異性と無理矢理話題を作って、面白くもない会話をする必要性を感じない。だから、無言で食べ続けている。
他の男女は、相手を探りながらも会話をする。
気を使った異性に話しかけられることもあるが、大抵は全く関心のない話題で、そっけない相槌を打って、すぐに会話は終了してしまう。
当然、談話会で何かが発展するわけでもなく、ひたすら退屈で居心地の悪い時間をやり過ごすしかないという、シンにとっては苦行のイベントであった。
今日の談話会では知った顔があった。
ナミルである。
生物学を途中から専攻し始めたのが珍しく、シンは顔と名前を覚えていた。
ナミルはシンの隣の席である。
最初に笑顔で挨拶されたが、その後はナミルから話しかけられることもなく、ナミルは自分の向かいと、シンとは逆側の隣の席の男楽しそうに話していた。
いかにも恋愛しか頭にないような女で、甘ったるい声にうんざりする。
(あ~、つまんねー。早く終わんねーかな)
今回もすっかり浮いているシンである。
「これ、どうぞ」
そんなシンの前に、グラタンを取り分けた皿が差し出された。
ナミルが取り分けたようだ。
「どーも」
一応礼を言う。
ナミルは目の前にあったグラタンをみんなに取り分けては配っていた。
「点数稼ぎも大変だな」
ボソリとシンは本音を漏らした。
こういうわざとらしいやり取りは嫌いだ。
場の空気が一瞬凍りつく。
「何言ってるんだ?気遣いじゃないか」
ナミルの向かいに座った男がシンに抗議した。
「いいんです」
ナミルは笑顔で場を和ませようとする。
「おまえ、ナミルちゃんに謝れよ」
今度はナミルの隣の男が言ってきた。
「いいんですよ。はい、キリーガさんもどうぞ」
いきり立つ男を宥めようと、ナミルは笑顔でグラタンを渡した。
他のメンバーは困ったように様子を見守っている。
シンは男2人を無視した。
「みんな渡りましたよね?食べましょ」
ナミルは明るく言った。
結局それ以上揉めることはなく、他の男女はまた会話に花を咲かせ始める。
シンはその後一言も喋らなかったし、誰からも話しかけられることはなかった。
-----------------------
談話会がようやく終わり、シンはホッとしていた。
この会は、大皿での食事の準備はしてくれるが、よそったり片付けたりするは寮生たちが行う。
一緒に何かをすることで、より仲を深めやすくなるからである。
シンはテーブルの上のものを流しに運ぶと、やるべきことはやったとばかりに部屋を出た。
早く部屋に戻って本の続きを読みたい。
「ちょっと待ちなさいよ」
しかし、背後から呼び止められる。
「あ?」
振り向くとナミルがいた。
「まだみんな片付けてるのに、1人だけ先に帰るってどういうこと?」
「片付けに10人もいらねーだろ」
「部屋の掃除とか、色々あるでしょ?」
「はぁ?めんどくせ!」
「そんなだから、みんなから相手にされないのよ」
「は?」
先ほどまでの愛想の良いナミルとは全く別人で、一瞬面食らったシンは、マヌケな声を出してしまった。
「お勉強がどれだけできるか知らないけど、人の気持ち考えて行動できないんじゃ、お話にならないわね」
「なんだよ、おまえ」
上からの物言いに、シンは怒りを覚えた。
「あなたのせいで、どれだけ場の雰囲気悪くなったと思ってるの?少し空気読みなさいよ」
「なんでおまえにそんなこと言われなきゃなんねーんだよ」
「あなたの発言で必要以上に気を使わなきゃならなくなったんだから、当然の苦情よ」
「ちっ!」
シンは舌打ちしてナミルに背を向けた。
これ以上付き合ってられるか。
「待ちなさいよ!」
無視して歩みを止めないシン。
さすがにナミルは追いかけてこない。
「声なんてかけるんじゃなかったわ」
背後からナミルの呟きと、そして部屋の戸が閉まる音が聞こえてきた。
男女各5名ずつの食事会である。
主に相手が決まっていない者が選ばれるため、シンは4度目の出席だった。
シンは談話会が非常に苦手である。
あまり知らない異性と無理矢理話題を作って、面白くもない会話をする必要性を感じない。だから、無言で食べ続けている。
他の男女は、相手を探りながらも会話をする。
気を使った異性に話しかけられることもあるが、大抵は全く関心のない話題で、そっけない相槌を打って、すぐに会話は終了してしまう。
当然、談話会で何かが発展するわけでもなく、ひたすら退屈で居心地の悪い時間をやり過ごすしかないという、シンにとっては苦行のイベントであった。
今日の談話会では知った顔があった。
ナミルである。
生物学を途中から専攻し始めたのが珍しく、シンは顔と名前を覚えていた。
ナミルはシンの隣の席である。
最初に笑顔で挨拶されたが、その後はナミルから話しかけられることもなく、ナミルは自分の向かいと、シンとは逆側の隣の席の男楽しそうに話していた。
いかにも恋愛しか頭にないような女で、甘ったるい声にうんざりする。
(あ~、つまんねー。早く終わんねーかな)
今回もすっかり浮いているシンである。
「これ、どうぞ」
そんなシンの前に、グラタンを取り分けた皿が差し出された。
ナミルが取り分けたようだ。
「どーも」
一応礼を言う。
ナミルは目の前にあったグラタンをみんなに取り分けては配っていた。
「点数稼ぎも大変だな」
ボソリとシンは本音を漏らした。
こういうわざとらしいやり取りは嫌いだ。
場の空気が一瞬凍りつく。
「何言ってるんだ?気遣いじゃないか」
ナミルの向かいに座った男がシンに抗議した。
「いいんです」
ナミルは笑顔で場を和ませようとする。
「おまえ、ナミルちゃんに謝れよ」
今度はナミルの隣の男が言ってきた。
「いいんですよ。はい、キリーガさんもどうぞ」
いきり立つ男を宥めようと、ナミルは笑顔でグラタンを渡した。
他のメンバーは困ったように様子を見守っている。
シンは男2人を無視した。
「みんな渡りましたよね?食べましょ」
ナミルは明るく言った。
結局それ以上揉めることはなく、他の男女はまた会話に花を咲かせ始める。
シンはその後一言も喋らなかったし、誰からも話しかけられることはなかった。
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談話会がようやく終わり、シンはホッとしていた。
この会は、大皿での食事の準備はしてくれるが、よそったり片付けたりするは寮生たちが行う。
一緒に何かをすることで、より仲を深めやすくなるからである。
シンはテーブルの上のものを流しに運ぶと、やるべきことはやったとばかりに部屋を出た。
早く部屋に戻って本の続きを読みたい。
「ちょっと待ちなさいよ」
しかし、背後から呼び止められる。
「あ?」
振り向くとナミルがいた。
「まだみんな片付けてるのに、1人だけ先に帰るってどういうこと?」
「片付けに10人もいらねーだろ」
「部屋の掃除とか、色々あるでしょ?」
「はぁ?めんどくせ!」
「そんなだから、みんなから相手にされないのよ」
「は?」
先ほどまでの愛想の良いナミルとは全く別人で、一瞬面食らったシンは、マヌケな声を出してしまった。
「お勉強がどれだけできるか知らないけど、人の気持ち考えて行動できないんじゃ、お話にならないわね」
「なんだよ、おまえ」
上からの物言いに、シンは怒りを覚えた。
「あなたのせいで、どれだけ場の雰囲気悪くなったと思ってるの?少し空気読みなさいよ」
「なんでおまえにそんなこと言われなきゃなんねーんだよ」
「あなたの発言で必要以上に気を使わなきゃならなくなったんだから、当然の苦情よ」
「ちっ!」
シンは舌打ちしてナミルに背を向けた。
これ以上付き合ってられるか。
「待ちなさいよ!」
無視して歩みを止めないシン。
さすがにナミルは追いかけてこない。
「声なんてかけるんじゃなかったわ」
背後からナミルの呟きと、そして部屋の戸が閉まる音が聞こえてきた。