すべてはあの花のために③
「理事長。後夜祭振りですね」
「そうなんだよ~。でも菊に勝ってるから!」
なんということだ。サブ役たちがこうも低レベルな争いをしているとは。
「お。オレも出してくれるのかー。ありがとーございまーす」
「え? キク先生! 絶対もう出ないと思ってたのに!」
どうやら彼もいたみたいだ。最初は柱の影で見えなかったけど。
「それはそうとお前さん、大丈夫なのか」
「え? 何がですか?」
担任だから、理事長から葵に時間が残ってないことを聞かされている。理由までは知らないだろうが、それをサラッとトーマにチクったので、葵は少々警戒していた。
「体調は」
「ぼちぼちですね。まあこんなもんかと」
返答に満足しなかったのか、キクは眉を寄せたが、それ以上は聞いてこなかった。
「それはそうと、オウリは大丈夫なんか。理事長にはオレから先に話しておいたが」
「(言わずに聞こうと思ってたのに。そういう余計なことしないで欲しいんですけど……)」
と思ってはいても、表情には出さない。
彼も昔から知っているのだ。すごく心配しているのが、ひしひしと伝わってくる。
「そのことで、理事長とお話ししたかったんです」
そう言って葵は、理事長ではなくキクの方を力強く見つめる。
「……え。オレもうここで終わり? もうちょっと話さしてくれたって――」
「もしかしたら今日、彼女はしょんぼりしてあなたのとこに行くかもしれませんね。慰めてあげる準備でもしておいた方がいいかもしれません」
「理事長、今日はこれで帰ります。大事な彼女を温めてあげる準備で忙しいので」
そう言ってキクはさっさと理事長室から出て行った。
「あれだけ積極的で、何も問題起こさないのがすごいよねー」
「大丈夫です理事長。作者はそんないざこざを起こすつもりはないみたいなので。彼らのラブラブを保つことが、この作品に欠けている糖度を保つ秘訣だと」
二人はキクが出て行った扉を見つめながら、大きくため息をついた。