ことりは優しく癒される
「泣かないの?」
「……泣かないよ。だって悲しくないから。誰かさんの脅迫めいた後押しのせいで緊張はしたけど、言えてすっきりしたし」
そう言うと、反対側に座っていた羽村が立ち上がり私の横にやってくると、またしゃがんで見上げた私の頭と肩をさりげなく抱き寄せ、優しく撫でてくれた。
「ちょ、羽村!?」
「お前、頑張ったな」
「……」
ただの同期で友達で愚痴を聞いてくれるサンドバッグ代わりだと思っていた羽村なのに、こうして腕の中に包まれていることに、妙に安心する。
振られたばかりで、友達と思っている人に慰められてもなんの感情も湧かないと思っていたのに、その言葉にいまさら泣けてきた。
泣く予定じゃなかったのに、羽村の腕にしがみついて泣いてしまった。