すべてはあの花のために⑥
わたしの隣に立ってくれる人は
バレンタイン前日。本日は日曜日のため学校はお休みです。
「……はい。そうなのです。なので今日は『生徒会の方』の家で明日の準備をしなければならないので…………はい。それは大丈夫です。わたしの方でしておきます。明日はその方の家から直接登校しようと思いますので。申し訳ありませんが…………はい。ちゃんとわかっております。それでは失礼致します」
家に連絡を入れた葵は、お泊まりセットをばっちり準備して、『女子会女子会~!』と内心で大盛り上がり。キサの家はばっちり覚えていたので、何とか早めには出たおかげで、約束の時間ギリギリには間に合った。
(※結局のところちょっと迷子になる)
葵がチャイムを鳴らしたら、凄まじい音が家の中から聞こえた。
「葵ちゃんいらっしゃい!」
「ご無沙汰しています。アカリさん」
流石にここは友達の家だ。葵は何かあってはと思って仮面を着けて挨拶をした。
「……葵、ちゃん……?」
「はい。お久し振りですアカリさん。お元気そうで何よりです」
挨拶を交わしていると、奥から遅れてキサが出てきた。
「あっちゃん、迷子にならずに来られたー?」
「……? 何のことですか? 時間より早めに出たおかげで、ギリギリには着けました」
「ちょっと迷子になってるじゃん……」
キサはがっくり肩を落としているけれど、アカリは首を傾げるばかり。
「紀紗ちゃん。この子本当に葵ちゃん……?」
「そうだよー。ちょっとわけあって、あっちゃん今お外ではこんな感じなの。ちょっと今強化中なんだよね~」
そう言ってくれるキサは、本当にやさしすぎる。
「すみませんアカリさん。違和感があるかもしれませんが、泊まらせていただいている間はこのままでいさせてください」
葵が頼み込むと、「何かわけが……ね」と。彼女は小さく笑ってくれた。
「わかったわ。……今日はチョコ作り、頑張りましょうね」
「はい。ありがとうございます」
玄関では何だからと、家に上がらせてもらった。