すべてはあの花のために❽

無意識


「え……?」という、か細く澄んだ声に、胸が苦しくなる。少女がゆっくりと、自分の方へ顔を上げてくる。


「――――」


 息が、詰まった。
 涙でいっぱいの、その少女の姿に。目を、奪われる。
 遠くで。レンズ越しでだって。……思ってたじゃないか。

 かわいいって。綺麗って。
 目の前に来たら。それがもっと、そう思うことぐらい。……当たり前。じゃないか。

 何も言わない少女は、いきなり声をかけられて驚いているらしく、オレを見たまましばらく固まっていた。



「いつもここで泣いてるでしょ」

「……え……?」

「(きれいな声……)」


 でも、「え」以外も聞いてみたい。
 そう思ったら勝手に体が動いて、彼女の隣に座る。


「なんで泣いてるのかな? って、いっつも思ってた」

「……。っ……」

「(あ。……また、涙が出ちゃった……)」


 でも、彼女は自分から離れようとはしなかったので、そのまま頑張って話してみることにした。


「かなしそうで、つらそうだったから。今日は声、がんばってかけてみた」

「…………」

「(……勇、気……)」


 ぐっと、彼女の見えないところで手に力を込める。


「ねえ? なんで泣いてるの?」


 教えて欲しかった。
 どうして泣いていたのか。誰も来ないような、こんなところで。ひとり、ぼっちで。

 言って欲しかった。
 助けてあげたかったんだ。オレが。


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