【警告】決して、この動画を探してはいけません!

◆第三十話『終わらない夜』


2022年9月18日(日) 午前2時15分/祖父の家
——カタン。

微かな音で、私は目を覚ました。

(……今の音は、何?)

布団の中で耳を澄ませる。

部屋の中は静まり返っている。

隣の部屋の裕也も、祖父も寝ているはず。

私はゆっくりと上半身を起こし、スマホの時間を確認した。

午前2時15分。

夜はまだ深い。

静寂が家全体を包み込み、耳を澄ませば、自分の心臓の音すら聞こえそうなほどだった。

遠くでは虫の声が途切れ途切れに響き、夜風が木々を揺らす音がかすかに聞こえる。

だが、それだけだった。

私はゆっくりと目を開け、天井を見上げる。

月明かりが薄く差し込んでいるせいか、暗闇は完全ではなく、ぼんやりと部屋の輪郭を映し出していた。

(こんな時間に何の音だったのだろう……?)

普段なら朝までぐっすり眠れるはずなのに、なぜか胸がざわつく。

"何か"が気になって仕方がない。

私はゆっくりと上半身を起こし、襖の向こうに耳を傾けた。

——シン……とした静寂。

祖父も裕也も寝ているはずだった。

なら、今の音は——?

寝ぼけた頭で考えながら、私はそっと襖を開けた。

廊下には、薄暗い闇が広がっている。

(……やっぱり、気のせい?)

祖父の部屋の襖は閉まったまま。

裕也の部屋からも物音はしない。

私はふぅ、と息を吐いた。

だが、その時——

——ギィ……。

どこかで、床が軋む音がした。

全身に、ゾワリと寒気が走る。

(……誰か、起きてるの?)

私は思わず振り返った。

だが、暗闇の中に"誰かの気配"はない。

廊下は静まり返っている。

祖父の部屋も、裕也の部屋も、異常はなかった。

なら、今の音はどこから?

——コン……コン……。

突然、窓を叩く音がした。

私は反射的に息を止め、布団に潜り込む。

(……まさか、また……?)

全身が硬直する。

何かが"そこにいる"と、確信せざるを得なかった。

ゆっくりと窓の方に視線を向ける。

だが、カーテンは閉まっていて、外の様子は見えない。

月明かりがうっすらとカーテンの布を照らしていた。

それなのに——

カーテンの向こうに"影"がある気がした。

(……終わったはずなのに……)

社に封じた。
動画も削除した。
これで、すべて終わったはずだった。

なのに、どうして?

どうして、"まだここにいる"の?

(……社の封印、本当に機能してるの?)

その考えが頭をよぎった瞬間——

——キッキッ……。

耳の奥で、あの"狒々の鳴き声"がした。

私は目を見開いたまま、布団を強く握りしめる。

(……聞き間違い? いや、そんなわけない……)

——キッ……キッキッ……。

確かに聞こえる。
でも、どこから——?

——コン……コン……。

また、窓を叩く音が響いた。

私はもう、見る事も、動く事もできなかった。
そのまま、ただただ朝が来るのを待つしかない。

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