すべてはあの花のために❾

選択


「……今と大して変わらなくないか」

「あれ? 驚かない……」


 頑張って決め台詞考えたのに。つまんなーい。


「あれが決め台詞とか、最低だな」

「おお。お褒めの言葉ありがとー」

「はあ……」


 まあ、逃げ出そうものなら地の果てまで追いかけるつもりだったけどね。オレから逃げられると思わない方がいいよ。そもそもレン足遅いし。


「……ま、それだけ証拠を出されたら、言い訳なんて通用しないだろ」

「潔いね」


 あの時本当に早く登校したから、これで脅すことにしたんだけどね。これがなくたって、レンを早くなんとかしてやりたいって思ってたんだ。これはただのきっかけに過ぎないよ。


「それで? これがバラされたくなかったら言うこと聞けってことか?」

「うんうん。そんな感じだね」

「また課題写させろとか、そんなことだろ」

「オレの分の課題もしてよ」

「……そんなことでいいなら」


 それで黙っていてもらえるならと、言葉を飲み込むレンに、オレは小さく笑った。


「そっか。やっぱりレンはやさしい奴だね」

「は……?」

「やっぱりレンにしてよかった。オレ見る目あるから」

「言ってる意味が、わからないんだが……」

「? 『レンはやさしい』……これの意味がわからないとか、ちゃんと勉強し直した方がいいんじゃない?」

「私はそうは思わないからそう聞いただけだ。気にしないでいい」

「レンはやさしいよ? そこは誇っていい。課題写させてくれるし」

「それだけでやさしいって判断されるのも如何なものか……」


 レンが頭を抱えてしまった。
 ……しょうがないな。オレもこのあとまだ生徒会の仕事があるし、長居はできないから。


「まあ課題もやってもらうとして」

「本気だったのか」


 ……さあ。レン。君を、オレが助けてあげよう。


「レンにね、協力してもらいたいことがあるんだ」

「……? 私にできることなら……」


 そしてオレが、上手に君を動かしてやろう。


「あのね、レンに王子様になって欲しいんだよね」

「……は?」


 だってこれが、……オレが考える、あいつの幸せだから。


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