すべてはあの花のために❾
椿と伊吹と桂
「……くん。ひなたくん。ごめんけどここまでしか送れないから起きてくれるかい」
「ん……。ふあー……。すみません爆睡……」
「それはいいんだよ。でも、申し訳ないことに車はここまでなんだ。俺は行けないけどここにはいるから、話し終わったらまたここまで下りてきて?」
「……はい。ありがとう。ございます……」
「だ、大丈夫? だいぶ寝ぼけてるけど」
「いえ。ありがとうございました。30分くらいで戻ってくる予定なので、また連絡します」
「ああ、それじゃあ俺の携帯を」
「あ。番号とかアドレス、知ってるんで大丈夫です」
「それじゃ」と、車からオレは降りたけど、『……アヤメが教えたのかな?』とか思ってるんだろうなーと思いながら、寺まで早歩きで登っていった。
「(……ふう。着いた……)」
さて、オレの命はもしかしたら今日までかもしれないけど、なんとか『あおいを助けるまでは待ってください』とお願いをしよう。そして国外へ逃げよう。
寺の中に入ると、ハゲおやじがいた。
「あ。すみませんハゲさん」
「ハゲじゃない桂じゃ!」
そんな素晴らしい突っ込みを、朝からさせてすみませんね。まだちょっと眠いんで。
「あの、夜中にお電話させてもらった九条日向と言います。少しお話しをさせてもらいに来ました」
「うむ。聞いておるよ。ツバキさんもイブキも会いたがっておったからの。案内しよう」
「お願いします」
イブキさんが仏のような人であることを祈る。
ある建物の中に案内されると、そこに女性と男性がいた。
「いらっしゃいひなたくんっ」
「どどどどど、どうぞ。ああああがって……」
「……ありがとうございます」
そういえば、トーマが『めちゃめちゃビビってた』って言ってたっけ。
それから部屋に通されて、温かいお茶をもらった。
「……あの、先に謝らせてください」
そう言って頭を思い切り机に――ゴツン! とつける。さっきから調子がおかしいけど、まあいいことにしよう。
「す、すごい音したわよ今」
「だだだだ、だいじょうぶかい……っ!?」
「すみません。多分寝不足で頭おかしいだけなんで。普段はこんなことないですすみません」
ぶつけた頭を摩る。結構痛かったから、もう完全に目は覚めた。
「あの、キサのこと。勝手にメールを送ってすみません。特にイブキさんには……ちょっとふざけすぎました。反省してます」
「いいのよ~ひなたくん。ああでもしないと、この人寺から出なかったと思うし」
「そそそそ、それに、個人情報とか。その。本当は知らないんだろう? きさちゃんのためにわざとそんなことを言ったんだろう? だから、ききき、君はっ、悪く。ないよっ!?」
「……すみません。ナツメさんを待たせているので、早速本題に行かせていただきます」
「え……」
イブキさんの質問には、にっこり笑って返すだけにしておいた。
知ってるしね。ばっちり。でも、ここまでビビってるのに、もっとそうさせるようなことはしたくない。オレやさしい。