【マンガシナリオ】こじらせ推し林檎の味は初恋
第3章 突然の同居
【第三話】
・林檎は嫉妬が混じった切ない顔で鈴を見つめる。
林檎「答えて」
鈴「林檎……おかしいよ。なんで急にこんなことするの?」
林檎「それは鈴が無防備すぎるからだろっ」
鈴「どういう意味?」
林檎「男と二人っきりで映画とか下心あるにきまってんだろ」
鈴「なにそれ、別に加納くんとは本の話で趣味があうだけだし、映画だってたまたま見たいのが同じだっただけじゃないっ」
林檎「てか、アイツの話とかどうでもいい。俺は鈴のことが聞きたい」
鈴「え?」
・真剣な林檎の眼差しに胸が高鳴る鈴。
林檎「……鈴、加納に気があんの?」
鈴「なんで、そんなこと聞くの?」
林檎「……心配だから……」
林檎「幼馴染だし」
・その言葉に鈴は奥歯を噛み締める。
鈴(そうだよね、私たちはただの幼馴染)
鈴(玲乃と流星くんとは違う)
鈴(この関係が変わることなんて一生ない)
鈴「心配、ありがとう。でもこれからは放っておいて」
鈴「……林檎とちがって、私、高校では……恋してみたいって思ってるから」
林檎「……」
鈴「じゃあ、先帰る」
・立ち去る鈴。
・ひとり残される林檎。壁に凭れてうなだれる。
林檎「だっせ……」
林檎「何やってんだよ、俺は……」
・それを陰から見ている人物がいる。⇒(※加納視点にする)
加納(ふうん。やっぱ、映画の約束とかしてなかったんだ)
・加納はふっと笑うと立ち去る。
──藍田家・リビング──(夜)
・エプロンをつけて、夕ご飯のコロッケを作ってる鈴。
鈴(はぁあ、なんか今日の林檎いつもと違ったな……)
鈴(今から理絵さんやお母さんが一緒とはいえ、会うのきまずいな……)
・鈴はコロッケを揚げ始める。サラダとお味噌汁も完成。
・炊飯器からはもくもく煙が立っている。
鈴「結局、林檎の好物作っちゃってるし……」
鈴(林檎がモデルを始めるまでは、理絵さんが仕事で居ないとき、一緒にごはん食べたりしてたけど……)
鈴(普通にできるかな)
・その時インターホンが鳴る。
鈴(あれ、お母さん早い)
・鈴は慌てて玄関に向かうと扉を開ける。
・するとそこには私服姿の林檎が立っている。
鈴「えっ、林檎?!」
林檎「窓開けてたらいい匂いしてきたから、先来た」
林檎「入っていい?」
鈴「あ、うん」
・林檎と二人きりなことと、林檎の私服姿にドキドキする。
林檎「お邪魔します」
・林檎は靴をそろえて藍田家に上がる。
鈴「まだご飯できてないから……座ってて」
・鈴はそう言うと急いで台所へ戻る。林檎もすぐに鈴のあとをついていくと、鈴が揚げ終わったコロッケを取りだしているのをのぞき込む。
林檎「うまそ。俺の好きなコロッケ」
鈴「たまたまだから……」
林檎「ラッキー」
鈴(良かった。いつもの林檎だ……)
・放課後のきまずさが和らぐ鈴。
鈴「でも……味は保証できないからね」
林檎「絶対美味いっしょ。俺、鈴のコロッケすっげ好き」
・無邪気に笑う林檎に胸がどきんとする鈴。
鈴(そんな顔で笑わないでよ……)
鈴(いつまでたっても林檎のこと、好きなままになっちゃうじゃん)
・そのとき、鈴が最後のコロッケを揚げているお鍋の中から取り出した際、油が一滴、鈴の手の甲に跳ねる。
鈴「あつっ……」
林檎「見せて」
・すぐに林檎は鈴の手を蛇口の流水で冷やす。
・林檎が至近距離で背後にいてどきどきする鈴。
林檎「赤くなってんな」
鈴「えっと……びっくりして大きな声でたけど、全然大丈夫」
・そう言って鈴は林檎の手を離そうとするが、林檎は真剣な顔をしたまま、鈴の手の甲を見ている。
林檎「病院行く? 痕なったりしたらいけないし」
鈴「このくらい平気」
林檎「ほんとに?」
鈴「大丈夫だって、心配しすぎ」
・そのまま林檎は鈴をのぞき込む。林檎から見つめられてドキドキが止まらない鈴。
鈴「ちょっと、近いよ」
林檎「聞いて」
林檎「さっきのことだけど」
鈴「え?」
林檎「俺、幼馴染だから心配って言ったけどさ……」
・見つめ合う二人。
──ガチャ。
・その時、玄関の扉が開き、理絵(林檎の母)と美琴(鈴の母)が入ってくる。
美琴「ただいま~」
理絵「お邪魔しまーす」
・鈴と林檎はすぐに離れて距離をとる。
鈴「おかえりなさい。あれ、理絵さんも一緒だったの?」
美琴「うん、ちょうど駅で理絵とばったり会って一緒に帰ってきた」
理絵「鈴ちゃん、久しぶりだね。大人っぽくなってる~」
鈴「えっ、全然です」
美琴「お、林檎くんももう来てたんだ」
林檎「お邪魔してます」
・美琴にぺこりと頭を下げる林檎。
美琴「ちょっと見ない間に背もまた伸びて、更にカッコよくなってるじゃない」
理絵「そう? 図体だけデカくなっちゃって、中身はまだまだお子ちゃまよ~」
林檎「うっせ」
・美琴はジャケットを理絵から預かりハンガーにかけると、鈴の作った料理に視線を移す。
美琴「コロッケおいしそう」
理絵「鈴ちゃんありがとうね。ご馳走になります~」
鈴「すぐ用意しますね」
林檎「俺も手伝う」
・鈴は林檎と一緒に料理をダイニングテーブルに運ぶ。
──藍田家、ダイニングテーブル──(夜)
・食事をはじめた四人。
美琴「あ~、仕事のあとのビール最高!」
理絵「ほんと幸せ~」
理絵「あ、宗介(鈴の父親)さん、今日も研究室泊り?」
美琴「そうなのよ~、宗ちゃん相変わらず研究が忙しいみたいで大学で寝泊まりしてるわ」
理絵「じゃあ、パパっ子の鈴ちゃんは寂しいわね」
鈴「お父さん、研究に没頭するとまわり見えなくなるのわかってるし、患者さんのために新薬開発に頑張ってるお父さんが好きだから」
・その言葉に美琴が嬉しそうに目を細める。
美琴「ほんと、親より出来た子になっちゃって」
理絵「もうっ、鈴ちゃん良い子すぎるでしょ~うちにお嫁さんに来て欲しい~」
美琴「林檎くんなら願ったり叶ったりよ~! ね、鈴」
鈴(もう、お母さんたら、私に話し振らないで~~~)
鈴「えっと……」
理絵「あ、ごめんね。林檎じゃ嫌だよね~」
鈴「あの、その」
林檎「母さん、鈴、困ってるから」
林檎「てか、そろそろ俺と鈴に話したいこと聞いてもいい?」
理絵「そうね」
理絵「美琴、私から話すね?」
・理絵(林檎の母)は美琴(鈴の母)に確認する。
美琴「えぇ」
・美琴が頷き、理絵はコホンと咳払いをしてから話始める。
理絵「実は……新しいブランドを立ち上げることになって、再来週から半年間だけロスに行くことになったの」
鈴(え?)
林檎「はぁ?! ロス?!」
林檎「それって、俺も一緒に来いってこと?!」
理絵「まぁ、そうね」
鈴(嘘っ、林檎がロスに?!)
林檎「行かねぇし」
理絵「う~ん。やっぱそういう反応よね」
林檎「当たり前だろ。俺は行かない」
理絵「そこでちょっと……相談なんだけど、うちは母子家庭だし林檎もまだ未成年だから、下宿させてもらうのはどうかなって思って」
林檎「え? どこに……?」
・理絵と美琴は二人で顔を見合わせる。
・二人の顔を見ながら、鈴の脳裏にあることが浮かぶ。
鈴「も、もしかして……」
美琴「林檎くんの下宿先、我が家どうかなって」
林檎「な……っ」
鈴「えぇえええええっ!」
・突然の林檎との同居話に驚く鈴で場面で〆。