結婚なんて、ゼッタイお断り!
──まずい、と思ったときにはもう遅かった。
一度溢れ出てきた言葉は、もう止められなかった。
涙と一緒に、私の叫び声が玄関中に響き渡る。
「本当は私のことなんて……好きでもなんでもないくせに!」
「美桜ちゃん、どうしてそれを……?」
「はっきり言ってよ!おじいちゃんにそう命令されてるんでしょ!?私と結婚したがっているのは、若頭になりたいからなんでしょ!?」
心の中で、本当は『違うよ』って言ってもらいたかったんだと思う。
あれはただの稲瀬の嘘で、本当はそんなことないよって……聞きたかったんだと思う。
でも、私が生きるこの世界は──……とても厳しい世界だった。
「あぁ、そうだぜ?お前のジィさんから言われた。お前を守って、婚約相手に選ばれた者を次期若頭にするってな」
「そんなっ」
「俺も、だよ」
「僕も同じことを言われたよ?」