結婚なんて、ゼッタイお断り!
第6話:三人でもっと一緒にいたいから
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どこまでも走り続けて、疲れ果てたときにはあたりが真っ暗になっていた。
スマホもお財布も家に置いて出て来てしまったせいで、帰る手段すらない。
「ど、どうしよう……バスにも電車にも乗れないし」
とにかく明るいところへ行こうと、なんとか力を振り絞って歩いていると、立派な旅館のような建物の入り口に辿り着いた。
きれいな暖色の灯りが付いていて、私はそこに避難することにした。
「(みんな、きっと心配してるだろうな……って、ないない!)」
きっと心から心配なんて、していないんだ。
私を護衛しないと、おじいちゃんに叱られるからそばにいてくれただけ。
そこになんの感情も込められてはいなかったんだ。
「……最低」
その場にうずくまるように座って、空を見上げた。
そういえば、こんなに暗くなるまで一人で外にいるのははじめてだ。
いつも伊織達や護衛がそばにいて、外が暗くなるころには強制的に家に連れ戻されていたっけ。
「はぁ。これからどうしよう……」
「──またね、とは言ったけど、俺達出会うの早過ぎじゃない?」
「な!?またアンタ!?もしかして着いてきたんじゃないでしょうね!?」
私が一人でうずくまりながら項垂れていたとき、目の前から歩いて来たのは今日二回目の稲瀬だった。
この人、まさか私を狙って……?