結婚なんて、ゼッタイお断り!
第6話:三人でもっと一緒にいたいから




***


どこまでも走り続けて、疲れ果てたときにはあたりが真っ暗になっていた。

スマホもお財布も家に置いて出て来てしまったせいで、帰る手段すらない。





「ど、どうしよう……バスにも電車にも乗れないし」

とにかく明るいところへ行こうと、なんとか力を振り絞って歩いていると、立派な旅館のような建物の入り口に辿り着いた。

きれいな暖色の灯りが付いていて、私はそこに避難することにした。





「(みんな、きっと心配してるだろうな……って、ないない!)」

きっと心から心配なんて、していないんだ。

私を護衛しないと、おじいちゃんに叱られるからそばにいてくれただけ。

そこになんの感情も込められてはいなかったんだ。





「……最低」

その場にうずくまるように座って、空を見上げた。

そういえば、こんなに暗くなるまで一人で外にいるのははじめてだ。

いつも伊織達や護衛がそばにいて、外が暗くなるころには強制的に家に連れ戻されていたっけ。







「はぁ。これからどうしよう……」

「──またね、とは言ったけど、俺達出会うの早過ぎじゃない?」

「な!?またアンタ!?もしかして着いてきたんじゃないでしょうね!?」





私が一人でうずくまりながら項垂れていたとき、目の前から歩いて来たのは今日二回目の稲瀬だった。

この人、まさか私を狙って……?





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