結婚なんて、ゼッタイお断り!
(陽太SIDE)
【陽太SIDE】
「やーい!陽太のチビ!」
「お前、ちょっと家がお金持ちだからって、調子のんなよ!」
「そんなダッセェ服きやがって!」
幼稚舎にいたころ、僕のことを指すあだ名は無数にあった。
〝チビ〟
“金持ち坊ちゃん”
〝ダサ男〟
〝のろま〟
幼稚園生のときは、両親も日本にいて、家に帰ってくる時間は遅かったけど、それでも毎日顔を合わせられていた。
父親は新しい薬をつくる研究者で、何かの薬を開発して有名になって、世界中を飛び回るようになった。
母親は歯医者さんで、ずっと世界中の貧しい子供達にもっと歯の治療をしてあげたいっていう夢があったらしい。
だから僕は、いらない子だった。
僕がいるせいで、母は仕事をセーブして僕を育てなくちゃならなかった。