恋のライバルは学年2位の優等生。私のアプローチは空振り中です!
第六話 「図書館」
碧洋学園は夏休みに入った。
珍しく沙羅は図書館にいた。
最近、動画で見た古い洋楽ロックの歌詞が妙に意味深で、検索しても納得のいく解釈が見つからなかったのだ。
「英国ロック大全」を手に取り、閲覧室へ向かう。
――ん?
入口から中を見渡すと、啓斗が座っているのが目に入った。
勉強でもしているのだろうか。
「啓斗? 勉強?」
沙羅はさりげなく近づいて、啓斗の机をのぞき込んだ。
「いや、今はこれ読んでる」
啓斗の手元には、意外にも小説があった。
「……小説?」
本のタイトルをちらっと見ると、『白衣の陰影』。
「え、もしかして医療系?」
「手術の手順の描写が詳しくて面白いんだよ」
「……いや、楽しむとこ、そこじゃなくない?」
沙羅が思わずツッコミを入れつつ、啓斗の隣に座り、「英国ロック大全」を開き、該当の曲を探す。
――ギリシャ神話を下敷きにして作られた詩? どうりで意味がわからんわけだ。
このまま二人でお茶でも……なんて淡い期待を抱いた矢先——。
「あれ、啓斗も図書館で勉強?」
聞き覚えのある声に振り向くと、真帆が立っていた。
「沙羅、なんでここにいるの?」
その言葉に、沙羅は内心ムッとする。
――それ、こっちのセリフだよ。
「ちょっと調べもの」
少し不機嫌に答えると、真帆は気にする様子もなく、啓斗の反対側にすっと座り、ノートを開いた。
「私も勉強するわ」
沙羅はチラッと横目で啓斗を見た。
◇◇
それからしばらく、三人はそれぞれの本に没頭していた。
沙羅は、本来の目的であった曲の意味をすでに理解していたが、閲覧室を出る気にはなれなかった。
なんとなくページをめくり続け、別の曲の解説を読むふりをする。
一方、真帆もまた、問題集を開いたまま微動だにしない。
――絶対、帰るタイミング見計らってるでしょ。
沙羅はチラッと真帆を見やる。
しかし、真帆も同じように沙羅の様子をうかがっていた。
――負けるもんか!
沙羅は、真帆と啓斗と二人きりになることを避けようと、粘り続ける。
――多分、真帆も粘ってるんだよね……
そして——。
「……ふぅ、読み終わった」
突然、啓斗が小説を閉じた。
沙羅と真帆が、同時に彼を見上げる。
「じゃあ」
啓斗は立ち上がると、特に何の迷いもなく、そそくさと図書館を後にした。
「……え?」
沙羅と真帆は、ぽかんとした顔で彼の背中を見送る。
「……あんたのせいで、帰るタイミング逃したじゃないの」
「そっちこそ!」
小声で言い合いながらも、結局二人は、しばらく無言のまま本をめくり続けた——。
珍しく沙羅は図書館にいた。
最近、動画で見た古い洋楽ロックの歌詞が妙に意味深で、検索しても納得のいく解釈が見つからなかったのだ。
「英国ロック大全」を手に取り、閲覧室へ向かう。
――ん?
入口から中を見渡すと、啓斗が座っているのが目に入った。
勉強でもしているのだろうか。
「啓斗? 勉強?」
沙羅はさりげなく近づいて、啓斗の机をのぞき込んだ。
「いや、今はこれ読んでる」
啓斗の手元には、意外にも小説があった。
「……小説?」
本のタイトルをちらっと見ると、『白衣の陰影』。
「え、もしかして医療系?」
「手術の手順の描写が詳しくて面白いんだよ」
「……いや、楽しむとこ、そこじゃなくない?」
沙羅が思わずツッコミを入れつつ、啓斗の隣に座り、「英国ロック大全」を開き、該当の曲を探す。
――ギリシャ神話を下敷きにして作られた詩? どうりで意味がわからんわけだ。
このまま二人でお茶でも……なんて淡い期待を抱いた矢先——。
「あれ、啓斗も図書館で勉強?」
聞き覚えのある声に振り向くと、真帆が立っていた。
「沙羅、なんでここにいるの?」
その言葉に、沙羅は内心ムッとする。
――それ、こっちのセリフだよ。
「ちょっと調べもの」
少し不機嫌に答えると、真帆は気にする様子もなく、啓斗の反対側にすっと座り、ノートを開いた。
「私も勉強するわ」
沙羅はチラッと横目で啓斗を見た。
◇◇
それからしばらく、三人はそれぞれの本に没頭していた。
沙羅は、本来の目的であった曲の意味をすでに理解していたが、閲覧室を出る気にはなれなかった。
なんとなくページをめくり続け、別の曲の解説を読むふりをする。
一方、真帆もまた、問題集を開いたまま微動だにしない。
――絶対、帰るタイミング見計らってるでしょ。
沙羅はチラッと真帆を見やる。
しかし、真帆も同じように沙羅の様子をうかがっていた。
――負けるもんか!
沙羅は、真帆と啓斗と二人きりになることを避けようと、粘り続ける。
――多分、真帆も粘ってるんだよね……
そして——。
「……ふぅ、読み終わった」
突然、啓斗が小説を閉じた。
沙羅と真帆が、同時に彼を見上げる。
「じゃあ」
啓斗は立ち上がると、特に何の迷いもなく、そそくさと図書館を後にした。
「……え?」
沙羅と真帆は、ぽかんとした顔で彼の背中を見送る。
「……あんたのせいで、帰るタイミング逃したじゃないの」
「そっちこそ!」
小声で言い合いながらも、結局二人は、しばらく無言のまま本をめくり続けた——。