超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する
「別に、ちょっと疲れただけよ」

声のトーンが落ちるナミル。
ナミルが上の空だった原因を察したシン。

「そっか。おまえあの色男が好きなのか」

「別に、シンには関係ないでしょ」

冷たく言われて、シンは肩をすくめる。

「あの色男はテラスと付き合ってんだぜ」

「知ってるわよ！」

バン！と机を叩いてナミルは吐き捨てた。
その剣幕に驚くシン。

「何殺気立ってるんだよ」

「自分の好きな人が、他に好きな人がいて付き合っているっている現実を、知っているのに更に念押しされて、穏やかでいられるわけないじゃない！」

シンの無神経さに怒りを覚える。
悔しすぎて、涙が溢れそうになった。

（こんなヤツに泣き顔なんて見られたくない！）

ナミルは乱暴に本とノートをかき集める。

「おいおい、どうしたんだよ」

「帰るのよ。あんたに教えてもらおうと思った私がバカだった」

「なんだと！」

「さよなら」

荷物を抱えてナミルは図書館を飛び出した。
本を借りる手続きをしていないが、そんなことはどうでも良かった。
ただ、一刻も早くあの場から逃げたかった。
アンセムが心から愛して大切にしている女の子は自分ではない。
あのマイペース女である。
まだ現実を受け入れられない自分を再認識するナミルだった。
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