加藤梅子の結婚


 セックスが終わって、身体を拭き終わった後、仁はソファーに座って俯いたままごめんと呟いた。私は替えの下着を身に着けてから、備え付けのパジャマに袖を通す。

「なんのこと?」

 仁は顔をあげて明らかにほ、とした顔をした。私は直ぐに目を逸らして、ベッドサイドに腰掛ける。

「いや…、激しくしたから」 
「たまには、いいんじゃん?」
 口の中がからからと渇く。
「良かった、んだったらいいけど。悪い、むしゃくしゃしてて」
「知ってる、でも求められてるみたいで新鮮だった」
 つらつらと勝手に口が回った。
「……お前、ああいうのも好みなのかよ」
「そう、かも」

 仁は満足そうな自信を取り戻したように口角をあげて、「お前やっぱいい女だわ」と笑った。その笑顔が昔から好きだった。いい女と言われるたびに主人に認められたような忠犬のような気持ちになれたから。―――惨めだ。犬はいつだって対等になれはしない。
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