【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
 国の三分の一にも及んでいない。そう聞けば、簡単なことに思えるだろう。

 だが、その三分の一にも及んでいない国土のすべてに、魔力を送るのだ。……絶対に、ろくなことにならない。

(普通ならば、数人で分割するところだからな。なのに、現状シェリルしか『土の豊穣の巫女』はいない)

 それすなわち、シェリルが全てを負担しなければならないということだ。……その負担はすさまじく、最悪本当に命を落としてしまうだろう。……そんなの、俺が耐えられるわけがなかった。

「……旦那様」

 俺があまりにも悲痛な面持ちをしていたからなのか、サイラスがそっとそう声をかけてきた。

 無理に笑おうとしても、笑えなかった。元々顔が怖いので、笑うよりも今の方がいいと言うのもあるのだが。

「このこと、シェリルに話した方が、いいと思うか?」

 こういう相談を出来るのは、もはやサイラスしかいない。

 そう思うからこそ、俺はサイラスにそう問いかけてみる。すると、奴はしばし考え込んだ。

「……これに関しては、私の意見はあくまでも参考程度にとどめてくださいね」
「あぁ、分かっている」

 そう言ってくるということは、相当厳しいことを言うつもりなのだろう。

 俺はそう思って、身構えた。

「私は、奥様にこのことを話すのが最善だと思います」

 はっきりと、サイラスはそう言い切った。

「……理由は?」
「このままですと、奥様は弱ったままでございます。体調が安定しないことの辛さは、よくわかっているつもりでございます」

 ……サイラスのその言葉は、正しい。サイラスは昔一度重い病気を患った。そのときのことを、思い出しているのだろう。

「それに、奥様はこのままですと精神的にも不安定でしょう。旦那様に隠し事をされている。それが、一番お辛いかと」
「……そうか」

 確かに、その言葉には一理ある。

 シェリルは俺のことを全面的に信じてくれている。だから。シェリルは、俺に隠し事をされることを良くは思わないはずだ。

 それはただでさえ弱った体調に追い打ちをかける形になってしまう。それは、明らかだった。
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