それは麻薬のような愛だった
「いっちゃんもアイス買いにきたの?今日も暑いねえ」
これにしよ、と独り言を言いながらお気に入りのアイスを手に取ると、横から伊澄からの視線を感じた。
「なに?選ばないの?」
「お前なんで制服なんだよ」
ラフな格好の伊澄と対称に雫は夏の制服を規定通りしっかり着用している。
昨年までは吹奏楽部で夏休みも部活のため制服を着て学校に通っていたが、それも引退している筈の今になってと怪訝に思ったのだろう。
「さっきまで塾の夏期講習行ってたの。制服の方が楽だし無難かなって」
「へー」
自分で尋ねておきながらさして興味も無さげにアイスの棚を覗いて手を伸ばし、馴染みの大きく口を開けた少年がプリントされているものを手に取った。
やっぱりそれ選ぶんだと雫は内心思いながら会計へ向かう。
意外とあまり冒険しないタイプの伊澄は昔からお気に入りが変わらない。食べ物も、服のブランドも、文房具も。