君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜
午前10時を回る頃、千紗がハッと気づくと見慣れた線路街の風景が目に飛び込んでくる。

「ここって…あの線路ですよね?」
呟くようにそう言うと、涼がコクンと無言で頷く。

「ここであの日、君と会えたから今がある。千紗を助けたのが俺で良かった。」
涼が遠い目をして噛み締めるようにそう言うと、丁度踏切に電車がやって来てカンカンカンカンと、遮断機が降り始めた。

「ここから、また新たなステージの始まりだ。そう思わないか。」
今度は千紗に話しかけてくる。
赤く光る遮断機の信号を見つめ千紗も何かの儀式のような、神妙な気持ちになってくる。

「本当ですね。ここからまたスタートラインです。」
満面の笑顔で涼の顔を見る。
目線があって涼もにこりと笑う。

「位置について…」

「ヨーイ、ドン!!」
「よーい、どん!!」
2人は口々にそう言う。

遮断機が上がり、同時に車が動きだす。

不思議なもので、新しく踏み入れた世界は輝きを増して、千紗の目にはキラキラと光って写り出す。

2人の新たなる旅の始まりだ。

これはある意味角膜をくれた人と共に歩む新たなスタートなのかもしれない。
惜しくも途切れてしまった命を受け継ぎ、その人の角膜と共に一緒に歩む人生の始まり。

「この目で、いろいろなものを見てみたいです。もちろん涼さんと一緒に。行きたい所、見たいもの、沢山あります。付き合ってもらえますか?」

突然千紗から生まれた前向きな言葉に、涼も驚き嬉しそうに笑う。

「ありがとう、俺も一緒に入れてくれて。沖縄の青い海に、イタリアの青の洞窟、中国の兵馬俑、なんだって付き合うから。新しい目で世界中の美しい景色を観て周ろう。」

昔、千紗に語って聞かせた壮大な景色を、一緒に旅行し感動を分かち合いたい。
あの頃は、夢物語だったけど今の2人なら現実に出来る。

「じゃあ次の涼さんの連休に、一緒に沖縄に行きたいです。」
千紗がそう言うからには、絶対に現実にしなくてはと涼は思う。

「いいね、約束だ。」

2人の旅は始まったばかりだ。
たとえどんな困難が待ち受けていようとも、きっと2人だったら乗り越えられる。

彼が隣に居るだけで、不安はいつしか自信になって、千紗の心を何倍にも強くしてくれる筈だ。

この先の未来が楽しみでしかない。

空を見上げれば、あの日の空より綺麗でキラキラと輝いていた。

                  終

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