君の瞳にこの愛を捧ぐ〜凄腕眼科医の執着愛〜

それから…

それから1週間ほど考えた千紗は、藤堂に治験に挑戦したいと告げた。

藤堂はその事を身内かのように心配し、親身になってそれで良いのかと何度も問いただした。

千紗はそんな藤堂に『少しでも可能があるなら挑戦してみたいんです。後悔はしたくないので。』
そう告げる。その決意は硬く揺るがない。

それから千紗の治験は丸三年続いた。
週に1度、週末には藤堂の運転する車で地方の病院へ足を運び、ついでに観光地を巡り沢山の綺麗な景色を目に焼き付けた。

新薬は劇的な効果はないものの、後退もしなければ、大きな改善も見られなかった。

それでも千紗は満足だった。
藤堂と過ごす貴重な時間は、千紗にとってかけ甲斐のないものになっていた。
デートの様な2人だけの週末の病院通いは、千紗が高校を卒業するまで続けられた。

それから、藤堂は専攻を眼科に絞り、眼科医となるべく勉学に励み、千紗と同じ年に大学を卒業した。そして、その後の進路をアメリカのカルフォルニアにある病院へと決めた。

その事が決まった時、誰よりも早く千紗に伝えた。

その時の2人の関係はなんなのかと問われたならば、恋人未満友達以上だとお互い答えた事だろう。

藤堂にしてみても、千紗と過ごした3年間は恋人も作らず、何よりも誰よりも千紗を優先にした。
彼女の為ならなんでもしたいと思い、願わくば自分以外の男が触れて欲しくないと、独占欲まで芽生え始めていた。

この気持ちに名前をつけるのならば、まさしく恋だった。いや、既に愛に変わっていたかもしれない。

だけど彼女は未成年であり、出会いが特別だっただけに、家族のような存在になっていた。この関係性を崩したくなくて、自分自身この気持ちには見て見ぬ振りを押し通した。

卒業と同時に進路を海外に決めたのは、眼科医としての腕を磨きたいという思いの他に、どんどん大人になって綺麗になっていく千紗を、これ以上近くで見ていられないと思ったからだ。

最後の一年は忍耐の連続だった。無意識にその可愛らしい仕草に身惚れてしまいそうになり、ともすれば触れたいという願望を抱く、雄であるがゆえの本能を藤堂自身が自覚した。
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