【完結】悲劇の継母が幸せになるまで
『エディット、行きましょう。こんな汚らしいところにいたくないわ』

『はい、お母様!』

『エディットは私たちに愛されているんだ。コイツと違ってな』

『わかっているわ、お父様。わたくしは特別だもの』


二人に囲まれて幸せそうに笑うエディットを見て、ヴァネッサの自尊心は粉々に砕け散った。
だけど同時に希望が芽生える。
病気が治ったら自分もエディットのように愛されるのかもしれない。
そう思わなければ、ヴァネッサの心は完全に自分が壊れてしまうとわかっていた。

(愛されたい。わたくしを見てほしいだけなのに……)

その一心だった。ヴァネッサは小屋から端の部屋に移された。
埃まみれでまるで物置きのようだ。
窓すらなく、天井は蜘蛛の巣だらけで真っ暗でジメジメしていた。
少しだけ肌の痒みがマシになったがほとんど変わらない。
義母はこの肌を見ると『醜い』『化け物』だと言って嬉しそうに笑う。
今思えば、ただ体裁を気にした行動だったが、ヴァネッサは両親から愛されるチャンスをもらえたのだと思った。
送られてくる講師たちに殴られても蹴られても懸命に耐えて学び続けた。

ヴァネッサの狭い世界ではそれが当たり前だったからだ。
咳で毎晩苦しみ、高熱に魘されながら生死を彷徨う。
『うるさくするな!』
そう言われていたため、毎日咳を抑えるのに必死だった。
口元は押さえすぎて跡ができるほどに……。
< 4 / 210 >

この作品をシェア

pagetop