おてんば男爵令嬢は事故で眠っていた間に美貌の公爵様の妻(女避け)になっていたので土下座させたい

寝室にて……。

夜の支度のあと、いつもと違う部屋に通された、セイラの部屋よりも大きい部屋だ。

「わ、だだっ広い部屋~」

セイラの部屋とは違い、白と紺碧とアンティークの金が特徴的な部屋だった。

キングサイズのベッドを見たとき、セイラは困惑した。脳内を何度かモザイクが通過した。セイラは婆やの話を思い出していたのだ。

「……うん。大丈夫よね。まだ」

夜九時頃まで本を読もうかと思ったが、本棚を見るとタイトルが小難しい。何冊か開いてペラペラめくったが、読むのは諦めてベッドに座る。
小説を持ってくればよかったなとぼんやり考える。

「昨日はあまり寝られなかったのよね」

婆やの話を一生懸命思い出そうとして、内容を思い出したら余計に寝られなくなった。

「ちょっとだけ横になろう」


それから次に目が覚めたら夜十一時三十六分。イェルガーはまだいないと思ったら、奥にある扉から光がもれていた。書斎のような小部屋で机に向かい何か書いていた。

「イェルガー?」
「起きたか」

イェルガーをじっと見る。

「寝ないの?」
「まだな。セイラはもう寝ていいぞ」
「さっき起きたばかりだから寝られなくなった」
「そうか、向こうで少し待っていろ」

しばらく沈黙が流れるが、嫌ではない。慣れてしまったとでも言おうか。
ベッドの上に戻り、背もたれに寄りかかった。クッションが四つあったので一つを抱き締める。

イェルガーが横に来る。

右手を捕まれる。握られた手が親指で何度か撫でられる。
セイラは緊張して言葉が出なくなっていた。
イェルガーが寝ころがる。

「……」
「イェルガー?」

呼んでも反応はない、耳を近づける。
すーすー寝息が聞こえる。どうやら速効で眠ったらしい。

覚悟とはなんだったのか、セイラは安堵しながら長い息を吐いた。
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