【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
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そもそも、どうして二人が今郵便局にいるのかを説明するには、時を一時間ほど前に遡る。
市場を見学し終えたアレクシス一行は、その後予定通りクロヴィスから指定された貴金属店を順に回っていた。
アレクシスは、宝石に造詣の深いジークフリートから色々とレクチャーを受け、エリスへのプレゼントとして真珠の宝飾品を注文し、それなりに充実した視察を行っていた。
だが、最後の店に向かおうとした道すがら、スリに出くわしたのである。
といっても、狙われたのはアレクシスたちではない。
被害者は別の高級時計店から出てきた妙齢のご婦人だった。
「スリよ! 誰か捕まえて!」
そんな悲鳴が聞こえ、アレクシスらが背後を振り向くと、バッグを胸に抱えた男が人々を押しのけ、こちらに向かってくるのが確認できる。
「どけ!」
と叫び、五人の中で最も弱そうなジークフリートの方へ突っ込んでくるスリを見て、真っ先に動いたのはセドリックだった。
セドリックはジークフリートの身の安全を図るべく、ジークフリートの肩を掴んで自身の後方へと追いやる。
それによってスリへの通路を開ける形になったが、今度はその空いたスペースにアレクシスが立ちふさがり、正面からスリを迎え撃った。
アレクシスがスリを地面に押さえつけるまでにかかった時間は、わずか一秒足らず。
事件はあっという間に解決し、もちろん怪我人はなし、バッグも無事。
スリの身柄はセドリックが警備隊に引き渡しにいくことが決まり、セドリックが戻るまでの間、残りの四人は現場付近で待つことになったのだが、ジークフリートが「ハガキでも書きながら待つっていうのはどうだい?」と言い出しことで、今に至る。