【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
「わたしはね、シオン。ずっといい姉でいたかった。あなたを守れる強い自分でいたかった。そうでなければ、わたしの存在価値がなくなるような気がして怖かったから。ずっとあなたに愛されていたかったから。……だから言えなかったの。ユリウス殿下に婚約破棄されたことも、帝国に嫁ぐことになったことも。あなたに失望されるんじゃないかと思ったら、どうしても言えなかった」
シオンは、エリスに手を握られたまま、黙ってその言葉を聞いていた。
薄暗い部屋のベッドの上で、その瞳にエリスの姿をしっかりと捉え、エリスの言葉の続きを待っていた。
「でも、こんなわたしに、あなたは言ってくれたわ。わたしと一緒にいたいって、昔と変わらず慕ってくれた。だからわたしも伝えたいの。わたし、あなたのことが大好きよ。あなたがいてくれたから、わたしは自分を保っていられたの。そのことを、どうか知っていてほしい」
それは、エリスが初めてシオンに見せた『弱さ』だった。
十年間、心の奥底に秘め続けていた、彼女の本音だった。
それを聞いたシオンは、エリスを強く抱きしめる。
「話してくれてありがとう、姉さん。僕も姉さんが大好きだ」と、今にも泣き出しそうな顔で――。
その後二人は、手を繋いだまま、同じベッドで眠ったのだ。
(まさか、この歳にもなって弟と手を繋いで眠ることになるとは思わなかったけれど、ちゃんと気持ちを伝えられたし、あれで良かったのよね)
昨夜のことを思い出すと今更ながら羞恥心が沸いてくるが、あれは必要なことだったのだと、エリスは自身に言い聞かせる。
するとシオンは、そんなエリスの心を知ってか知らずか、嬉しそうに目を細めた。